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たらちね

読者の皆様、おはようございます。日ましに暖かくなる今日この頃、初かすみ 引くや春着の 裾模様、随分艶っぽい俳句もありますけれど、如何お過ごしでしょうか。駿河路や 花たちばなも 茶の匂ひ、そろそろ新茶のシーズンですし、日中なぞは汗ばむ陽気ですが、黄昏時や早暁の折には肌寒く、将に三寒四温、空気も乾燥しておりますし、読者の皆様方も、風邪には充分お気を付け下さいませ。

ところで僕、仕事柄、院内や院外からメールを貰う事が多く、様々な職種の方々と毎日やり取りをしています。つくづく思いますのは、文は人なり、とは本当ですねえ。僕なぞ、拙ブログを読まれておられる方は疾うにご存じでしょうけれど、時折汚い言葉で自民党や官僚やアメリカを罵ったりして、反省猛省内省の繰り返しであります。自分の事を棚に上げ、誠に恐縮ですが、結構色々なビジネス・メールが来るんですよね~。やたらと冗長で、何が言いたいのか分からなかったり。言葉遣いは丁寧ですけれど、よくよく読むと、自分の主張ばかりの慇懃無礼なもの。妙に短くて、用件だけ記してあるのも、何だか興醒めです。挨拶はむづかしい、いみじくも、作家の故丸谷才一先生もおっしゃっていましたけれど、ビジネス・レターに限らず、恋人同士のメールでも、上司とのやり取りでも、時候に触れ、用件は丁寧に、相手の事を思いやり、嫌味や自慢は無く、好印象を残すって、本当に大変です。

これは僕の個人的な体験で、何処まで有益か分かりませんけれど、昔の邦画や俳句、古典文学、そして落語に触れるのが、語彙を増やす一番の近道と思うんですね。そうですねえ、例えば艶っぽい言葉ですと、岡惚れ、これはプラトニックにお熱を上げる事、そして馴れ初め、これは男女が初めて逢った時ですよね。心を寄せて憎からず思い、相思いとなり、逢瀬を重ね、殺し文句があり、そして、後朝の別れがあり、深くなる、ねんごろになる、これは男と女の間柄になったという事であります。そして悋気があり、心移りをし、焦がれ泣きをし、つれなくなり、愛想尽かしとなる、という訳でありまして、日本語って本当に美しいですよね。今の幾つかの言葉は、恋愛に限って書きましたけれど、かっての日本では、日常生活において、素敵な言葉が沢山使われていたんです。腕によりをかけて料理を作り、足の赴くままに散歩をし、倦まず弛まず勤めを全うし、人様から受けたご恩は徒や疎かにせず、お客様が来れば「どうぞおあがり下さい」、分相応に暮らしていた訳ですね。こういう素敵な言葉が満載なのが、昔の邦画なんです。当時の風俗がタイム・カプセルの様に保存されていまして、女優さんも男優さんも、美しい大和言葉を自然に使いますし、所作も優雅です。まァ、当時の俳優さんは皆、日舞や書を学んでいますから、それも当然ですよね。

そして、口下手な方に是非お勧めしたいのが、俳句や落語なんです。俳句は、日常の瞬間瞬間を切り取り、五七五の言葉を選び、凝縮するものですよね。当然言葉の選択には敏感になる事請け合いです。暑いなあ エアコン入れたら カビ臭い、今、僕が3秒で作った俳句ですけれど、字余りですし季語も無く、これは悪例ですから、決して真似しないで下さいね。さて、落語の効用は、人情の機微が分かる様になり、そして、状況を説明する事が上手になる事でしょうか。文楽、志ん生に志ん朝、米朝に談志、大名人は多いですが、僕、この間久方振りに故三木助師匠の噺を聞きましたけれど、その間、そのリズム、やはり絶品でしたもん。

東京が江戸と言いました頃とは随分違うそうですな。隅田川で白魚が獲れたなんて時代があったそうでして、広重百景などを拝見しますと、大きな四つ手網を下しまして白魚を獲っている処などがございます。ご年配の方の話を伺っていますと、二月の大橋の白魚というものが一番美味しいんだそうですな。都々逸に「佃育ちの白魚さえも花に浮かれて隅田川」なんてえのもあります。で、昔は乗り物が只今の様に、自動車でいらっしゃるなんて時代じゃございません。大概は船と駕籠でございますな。とりわけまして、船の方ときますとのんびりとしまして、一杯召し上がる方が、二・三人で差し向かいでこう杯をやったりとったりしながら、亀戸の梅の噂でもしたりしているうちに、段々と船が上手に登って行く、なんてぇのは、何かのどかな風景ですな。船頭さんの方も良く心得ております。この人は筋の通ったお客だなと思うと、船の艫のところに四つ手網をかけてますと、いつしか白魚が入ります。頃合いをみて、お客さんに声を掛けてくれます。あいよっ、てんで、こう杯洗を出してやりますと、生きている白魚を、杯洗の中へ泳がしてくれます。これを箸でつまんで、お下地の中に入れますと、白魚はまあ、水とお下地の区別がよくつかないらしいんですな。ですからこれをパクと飲んじまう。で、白魚の中にず~っと下地が入って行くのが透き通って見えたそうですな。きれいなもんですね。これを箸でつまんで口ん中に入れまして、ちょいとこう前歯で噛みますと、いい具合にお下地が口ん中に広がりましてね、美味しいんだそうですな、こりゃまあ、あたくしは頂いたわけではございません。まァ、話を聞いてよだれを垂らしただけなんですけれども…。

という枕から、魚屋さんを題材にとった人情噺、彼の名作「芝浜」に入るんですが、演芸場は既に江戸情緒で満ち溢れ、将に名人芸であります。

さて、実は今週の頭から、上野鈴本演芸場、ここは落語のメッカですけれど、珍しい趣向の特別興行が始まっているんですね。所謂色物と呼ばれ、通常はやや低い扱いの、「紙切り」をメインの興行なんです。紙切りの初代は林家正楽師匠ですけれど、50回忌を迎えまして現在は三代目なんですが、その追悼興行、という訳なんですね。さて、皆さんご存じと思いますが、この紙切りとは、お客さんから何かお題を頂いて、その場で紙を切り、その形を造り、披露する、という日本のみの演芸なんです。僕、三代目正楽師匠は、上野鈴本は勿論の事、新宿末廣亭や浅草演芸ホールでも拝見しましたけれど、本当に凄いですよ。例えば、お客さんから「ゴジラを切って!」と声が掛かるとしますよね。軽妙な話術で話術で皆を飽きさせず、「ううん、怪物だけじゃあ詰まりませんな、何処かに登って貰いましょう」と言い、僅か数分で、東京タワーに登るゴジラを切ってしまい、それがまた見事なんですから、場内は拍手喝采であります。この日本だけの芸、紙切りは世界的にも評価が高く、正楽師匠は殆ど地球一周したと言いますから、凄いもんですよね。その証左として、お弟子さんには、生粋のスイス人の女性、鈴木エリザベートさん--この方、蒼い眼をして日本語がペラペラ、十二支に舞妓にお神輿に藤娘と切りまして、館内は大拍手でしたよ。--までいるんですから、目立たないかもしれませんが、これこそ真の民間外交でして、政府は正楽師匠に何か勲章を上げた方が良いと思うなあ…。

さて、今日は日本情緒に溢れた拙ブログになったと自負していますけれど、昨日、親戚の叔母さんに貰った浅蜊が沢山あり、昨晩から砂を吐かせているんです。今が旬で肥え太り、地の物ですから、何にして食べようか、今から楽しみなんですね。味噌汁や酒蒸しは勿論なんですが、今日の拙ブログの趣向には添いませんが、スパゲッティ・アッレ・ヴォンゴレ、イタリアはナポリの名物料理、所謂ボンゴレ・ビアンコにして、クレソンも一緒に炒めて絡め、そして良く冷えたシャブリですね!?では皆さん、週明けまでは暫しのお別れ、お天気も良い様ですし、楽しい週末をお過ごし下さいませ。それでは、ごきげんようさようなら。
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