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秋刀魚火事 <°)))彡

どうにもこうにも腹の虫が収まらねえ、ってなあこの事でありまして、大勢のお客さんの前で、折角の高座に上がらせて貰ってるのにね、のっけから愚痴で申し訳ございませんが、暫しの間、お付き合い下さいまし。

カラスカァと啼いて目が覚めまして、何だか随分と降ってやがるなあ、今日から博多なのに参ったぜ、と寝ぼけ眼でNHKを見てたんです。そうしましたら、関東全域のお子さん方にね、甲状腺癌の検査をした、ってんですよ。1818人の幼気な子供達のうち、1139人に小さな嚢胞があって経過観察、7人は再検査、こりゃあもういやはやなんとも、とんでもない確率でありましょう?私の乏しい知識を総動員しまして、確かこの甲状腺癌、どちらかというと成人女性に出やすい、と聞いた事がございます。そしてね、子供の甲状腺癌の確率は、大体100万人に1人と言われて久しいんですな。それがね、半分以上のお子さんに何らかの疑いがあるだなんて、こいつァ酷すぎると思いませんか?おまけに、お上の連中は、「原発事故との因果関係は認められない」なんて言いやがるんで。そりゃあね、確かに立証は困難でしょうよ。でもね、100万分の1の確率が、1818分の1146だなんて、そんな異常事態、放射能以外にあり得ないと思いますがねえ…。私、慌てて全国紙各紙を見たんですがね、何処にも何にも書いてねえんです。

どいつもこいつもとんでもねえ悪党だ、黙って無かった事にしやがる、お天道様は何処にいるんだい、と空を見上げてみても涙雨、哀しい事ばかりなんですが、ついこの間も、北海道の漁港に、100㌧を超す鰯が打ち上げられましたな。これ、日本海側でも、深海魚が沢山獲れたりして、私ね、放射能の所為か地震の前触れか、何だか危ない気がしてならないんですな。昔の日の本では、鯰が暴れたら気を付けな、なんて言われてたものなんですが、これ、食べても中々美味しいんです。天婦羅に蒲焼にたたき、あっさりとした白身なんでね、どうやったって旨いんですが、今の時分ですてえと、やっぱり秋刀魚、これしかございません。でもねえ、秋刀魚も放射能が怖くて食えねえや、中国の魚とふぐの毒とどっちが危ねえんだ、とお嘆きの方も多うございましょう。時代を遡りまして、江戸の頃には、そんな悩みも無く、皆、七輪で焼いた秋刀魚を喜んで頬張っていた様でございまして…。

時は元禄、花のお江戸の八百八町、現在の蛎殻町の辺り、お隣は職人の町人形町でございますが、そこに大地主がおりまして、達、という男が居たんですな。気は決して悪くは無いんですが、何せ吝いと申しますか、大変なけちん坊、それもその筈、度を越した女好きでありまして、もう今時分になりますてえと、寒いものですから、西瓜なぞ何処にも売ってやしません。達の大店には、若い綺麗な女中さんが多いと大層評判だったのですが、その中でも一番の美女に、「おい、西瓜を1つ買っといで。」、と申し付けまして、何せ晩秋の季節ですから、四方八方駆け廻ったんですが、何処にもありゃあしません。下総の国、今で言う千葉ですな、そこまで行って漸く見つけて参りまして、「旦那さん、どうしてそんな無理難題を言うんですよう。」と女中さんがふくれっ面で申しますと、「お前の買って来てくれた西瓜が食べたかったんだよ…。身体が冷えたろう、さあ、こちらにおいで…。」ですって。そりゃあねえ、こんな事をしておりましたら、如何に大地主と言えども、お金が足りはしません。それに加えて、吉原だ神楽坂だ向島だ、時には河岸を変えて浅草だ、京都の祇園も先斗町も粋だねえ、「お1つ如何、達様…。」「おお、じゃあ頂くか、はい、ご返杯。」なんて悦にいってるんですから、内実は火の車なんですな。放蕩を尽くした挙句、遊ぶ金の欲しさ故、長屋の店子達に対して、大変なけちん坊になってしまった、という訳でございます。

「いやまあ、参ったぜ、八っつあん。」「どうしたい、弥吉。」「いやねえ、大家の達さんだよ。」「又何かやらかしたかい。」「言えね、こないだ、芝の浜に潮干狩りに行ったじゃねえか。」「おお、おお、ありゃあ、獲れたねえ。日本中の蛤が皆揃ったんじゃねえか、てな具合だったぜ。これが本当の貝合わせ、なんつって…。」「詰まらねえ冗談はいいよ。そうさなあ、蛤飯、鍋、そうは桑名の焼き蛤…。」「畜生、今思い出しても涎が出そうだぜ。」「達っつあんにも散々お裾分けしたじゃありませんか。」「うん、そうだったそうだった。」「でもね、蛤は旨いのは旨いんだが、貝殻が出ますよね。」「そりゃあそうだ。」「でね、貝殻を捨ててたら、達っつあんが大層な怒りようでね。」「へえ、そりゃまたどうしてだい。」「道端に捨ててはいかん。第一汚いよ。おまけに、貝殻で道行く人が怪我をしたらどうするんだい。いいから、うちの蔵にしまっておきなさい。」、そうしますてえと、ついこの間、その貝殻に、「何にでも効く 秘蔵の膏薬」って薬を詰めやがってね、売ってるんですな。貰い煙草は当たり前、草鞋や箕まで拾って来る、皆で呑んで勘定の段になると何時の間にやら姿が見えず、本人は遊ぶ金欲しさの余りなんでしょうが、お裾分けまで貰って、貝殻までも商売にする、江戸っ子は何よりも吝嗇を嫌いますから、こりゃあいっちょ懲らしめてやろう、達っつあんの親父さんにもお世話になったし、女狂いを止めさせ、ケチを控える様にと、長屋連中は一致団結、何やら話し合ったんですな。

或る良く晴れた秋の朝、達の屋敷の前の空き地に、店子達が三々五々集まりまして、よくよく見ますと、手に手に七輪と秋刀魚を持っております。店子達の策と言いますてえと、皆で一斉に秋刀魚を焼けば、大量の煙が出ますわな。そこで、小声で、「こりゃあ魚屋じゃあ間に合わねえ」、大声で、「河岸だ~、河岸だ~!」、そう答えれば、凄まじい煙が出ている上に、河岸と火事を間違え、慌てて飛び出して来るよ、そこを皆で笑ってやろうじゃねえか、恥をかけば、流石のあの達っつあんも、流石に大人しくなるに違いねえよ、という訳でございまして、早速、七輪に炭を入れ、網に秋刀魚を置き、団扇でパタパタと扇ぎ始めます。やがてモクモクと煙が上がり始めまして、それが段々と大きくなる。こりゃあ良い按配だと、店子達はほくそ笑んでいたんですな。

さて、所は変わりまして、達っつあんであります。お気に入りの女中達に飯を盛らせ、さあ皆で朝飯だ、という処だったのですが、淋しい事におかずは沢庵のみ、それ以外は何1つありゃあしません。「旦那さん、毎日毎日これじゃあ、何もやる気が起きませんよう…。」「全く、お前さん達は何を言うんだい。大根の漬けたのは、滋味に溢れ栄養満点、お肌に良く消化に優れ、色の白いのは七難隠す、触らぬ神に祟りなし…。」「最後は良く分かりませんが、分かりました分かりました、いただきます。」、その時、達の耳に「火事だ~、火事だ!」と聞こえたんですな。ハッと外に目をやりますてえと、黒い雲がもうもうと上がっております。慌てた達、取るものもとりあえず、手に握った丼飯と箸を持ち、外に飛び出しました。

「おっ、達っつあんが出て来やがったぜ!」「河岸だ~、河岸だ~!」、きょとんとしていた達つぁん、やがて、秋刀魚を焼く煙と気付きまして、顔を真っ赤にして怒ると思いきや、「こりゃあ渡りに船だ。沢庵しか無くて困っていたが、この匂いをおかずに飯を喰おう。」

本日は折角のお休みですが、全国的にお天気が悪いそうで、お足元が悪い中わざわざのお越しの上、一席お付き合い頂きまして、誠にありがとうございましたm(_)m。私はこれから、筑前の国は博多に参ります。次の高座は水曜日を予定しておりまして、お客様方の又のお出でを楽しみに、ありがとうございました、ありがとうございました、ありがとうございました…。
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