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SAUDADE

ここ大分の天気も、何だか不穏な感じでして、降ったり止んだり、まあ最近は水不足でしたから、恵みの雨なのでしょう。でも、自転車通勤の僕には辛い事ばかりでして、今朝も必死に漕いでいましたら、病院に着く途中からパラパラ来ちゃいまして、閉口しました。それにしても、関東の竜巻、本当に凄かったですねえ。怪我人は60人を超え、500棟以上の建物に被害が出た由でして、不幸中の幸いと言いますか、命を落とす方が居なかった事だけは、本当に良かったですね。九州には台風が接近中でして、読者諸賢の皆様方も、どうか屋根に上ったり、河原に行かれたり、田んぼを見に行かれたりしないで下さいね。

さて、これだけ様々な技術が発達しているのに、天気や地震の予報は未だ未完成、というのがもどかしくてなりませんが、我が国には、自然現象を解明しようという、優れた学者さんが沢山居たんですよ。「天災は忘れた頃にやって来る」と言った、地震学者の寺田寅彦。「雪は天から送られた手紙である」と記した、雪の結晶の研究で知られる中谷宇吉郎。竜巻に関する世界的権威であり、何だか野球選手の様ですが、MR.TORNADO、と呼ばれた藤田哲也。僕、これら偉大な先人達の偉業が、日本人にだけ広く知られていないのを惜しむ人間ですが、こういう方々こそ、教科書に載せれば良いのに、何時もそう思っています。

そして、こういう方々って理系の専攻なのに、文才に優れた人が多いんですよ。あくまで私見ですが、文は人なり、自然の美しさを感じるビビッドな感受性が、率直に表現されていて、先生方の記述に触れながら、思わず膝を打つ事が多いですもんね。「雪は空から送られた手紙である」、こんなリリカルでポエトリーな文章、そこら辺の作家じゃあ、決して書けやしませんよ。冒険家の植村直己さん、彼も、ご自身の探検記を日記として残しています。技巧や洗練とは程遠く、決して上手な文章ではありませんが、やはり読者の胸を強く打つんですよね。

閑話休題、日本には気象学者は数多くいらっしゃいますが、僕、最も尊敬出来る人達が居るんです。それは藤原さん一族でありまして、この方々は、天気予報は勿論の事、文才にも恵まれた、稀有な血筋と思うんですよね。まず、初代にあたります、藤原咲平さんのご紹介から参りましょう。苦学の末に東京帝国大学を卒業、気象庁に入って、天気予報に専心します。ノルウェーに留学、ロンドンで論文を発表、ウィーンやカナダで開かれた国際会議にも出席、将に日本を代表する気象学者でした。ところが、第二次大戦後は、一切表に出なくなるんですね。実は、アメリカ本土が爆撃されたのは、彼の国の200年を超す歴史の中で1度しかありません。それは、日本の風船爆弾なんです。こんにゃくと和紙で造った気球に水素を詰め、爆弾を吊り下げ、ジェット気流に乗り、一路アメリカ本土を目指す、というシステムでして、その開発に従事したのが、藤原咲平さんだったんですね。戦後、その事には一切触れず、全ての公職から身を引き、著述に専念した、将に侍、もののふであります。あ、ももクロのファンの事じゃありませんよ!?

続いて、咲平さんの甥っ子が、藤原寛人さんであります。叔父さんと同様、気象庁に就職、富士山観測所という過酷な環境下、何年も勤務します。その後、満州の気象台に転勤となるのですが、そこで日本は敗戦を迎えるんですね。仮にも日本国に勤める人間ならば、女子供を先に逃さねば、という事で、自らロシアの捕虜となるんですね。奥様と子供達は、悲惨極まりない逃避行の末、無事に日本に生還するのですが、その顛末を縷々綴り、記録的なベストセラーとなったのが、藤原ていさんの「流れる星は生きている」であります。ここまで書けばお分かりですね。自ら捕虜になったという男の中の男、藤原寛人さんは、後にヒット作を連発する作家となり、ペンネームは新田次郎と命名します。共に映画化された「八甲田山 死の彷徨」「劔岳 点の記」、NHK大河ドラマの原作「武田信玄」、その他の作品群も骨太、そして凛々しい男達が沢山登場しますから、僕、大好きな作家の1人なんです。

その新田次郎さんの息子が、数学者であり、エッセイストとして有名な、藤原正彦さんです。僕、今の日本で、本当の知識人や、大人の読者の見識に耐えうる、唯一無二の随筆家と思います。「若き就学者のアメリカ」「遥かなるケンブリッジ--数学者のイギリス」、この両著は、日米英の比較文化人類学とも言うべき、必読の名著と言えましょう。ベストセラーとなった、「祖国とは国語」「国家の品格」もお薦めです。そして、何と言っても素晴らしいのは、真面目一辺倒では無く、ユーモアたっぷりな処でしょうか。どうも日本の文学者は、ゆとりが無いのかなあ、笑える読み物って少ないんですよね。その点、我らが藤原先生は一味違います。ご本人のご面相は,お世辞にも絶世の二枚目とは言い難く、寧ろお茶目で憎めないお顔なんですが、「フェロモン大魔王」「愛人、情婦、恋人達が、波の様に数限りなく押し寄せて来る」とお書きになるので、読者の微笑を誘います。

僕、最近の小説は甘ったるい感がして、殆どと言っていい程、手に取りません。それでも、最近読破したものがありまして、それは、「孤愁 サウダーデ」なんです。実はこの小説、新田次郎さんの絶筆でして、1980年に連載が中断され、未完のままでした。その続きを、息子の藤原正彦さんが引き継ぎ、父の遺志を遂げ、2012年に完成させたのです。未読の方の為に、全ては書けませんけれど、明治期に日本に来た、ヴェンセスラウ・デ・モラレスというポルトガルの軍人のお話なんですね。世界一美しく繊細で優雅な日本人女性と、四季に恵まれた我が国を愛し、母国ポルトガルの国籍を棄てるのか否か…、という粗筋であります。日本人、そして我が国に誇りを持てる素晴らしい一冊でして、是非とも全国津々浦々の図書館に置いて欲しい、僕、そう思いました。

そして、何よりも美しいと思ったのは、亡き父の遺志を継ぎ、未完の小説を完成させるなんて、それだけでも涙がこぼれる思いです。お爺さんから受け継いだ、藤原一族の侍の精神は伝承されて行く、僕、そう感じました。私事で恐縮ですけれど、僕、16歳で母を亡くし、37歳で父を亡くしていますから、どんなにしたくても、親孝行はもう出来ません。読者の皆様方も、肉親がご健在のうちに、せめて旅行だけでもされた方が良いですよ。

今日の拙ブログは、竜巻の話から、藤原先生の話になるとは、書いてる本人も驚きの展開でしたが、如何でしたでしょうか!?僕、今日はこれから、スケジュールが大変タイトでして、ウルフルズじゃありませんが、サムライソウルで頑張って来ます!!
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