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ゆれる

月日は百代の過客にて行かう年も又旅人なり、嗚呼、土中の蝉は暫しの間、生を謳歌しそして又土へと帰りたり、それ邯鄲の夢の如し。生あるものは何時かは滅び、諸行無常の響きあり。長月もはや半ばを過ぎたれど、未だ残暑厳しき折り、ふと心ざわめき立ち、久方振りに劇場へと脚を運びけり。巷間伝えられる処に依れば、「夢売る二人」なる女流監督の作品、中々のものと喧しく騒がれている由。既に加奈陀の映画祭に出品中であり、倫敦、豪州での公開が決まりしもの也。我、心中の興奮を抑えつつ、銀幕を仰ぎ見るに、中々の傑作と感じる事頻り也。

読者の皆様、おはようございます。何とかこの調子で森鴎外や永井荷風ばりに書き続けようかと思いましたが、やっぱり明治の人は学がありますよね、浅学な僕ではここら辺が精一杯でして、高校時代にもっと古文漢文を勉強しておけば良かったです。という訳でここからは現代文で参りましょう。さて、先日、西川美和監督の「夢売る二人」を漸く観る事が出来ました。大分のミニ・シアター、シネマ5BISでの鑑賞でしたが、早い時間帯にも関わらず10名程度のお客さんがいらっしゃいました。さて、この西川監督、まだ4本しか撮られていませんから、知名度は最近知られて来たぐらいでしょう。広島出身の39歳、早稲田大学文学部美術史学卒、自ら手掛けた小説は直木賞候補となり、どの映画作品も数々の賞を獲得、中々可愛らしい容姿をされた大変な才嬢と思います。

未見の方の為に、映画の詳細は詳しく書けませんが、この人の映画の特徴は、人間心理の葛藤や逡巡やカオスを木目細かく丁寧に撮る処と言えましょう。取り上げる題材は、家族であり兄弟であり共同体であり、女性ならではの男性には無い視点なんですよね。平成に蘇った、女性版成瀬巳喜男の趣です。男から見ればドキリとする描写が多く、それでいてそこはかとないユーモアもあり、僕、女流監督はそう詳しくありませんが、知る限りではピカイチの才能でしょう。「ロスト・イン・トランスレーション」で一躍話題を集めた、ソフィア・コッポラ(「ゴッドファーザー」や「地獄の黙示録」のフランシス・フォード・コッポラ監督の娘さんですね。)監督とは物が違います、勿論西川監督が段違いに上です。「夢売る二人」は、居酒屋の夫婦が火災で店を失い、再建資金獲得の為に、両者が協力しあい結婚詐欺を繰り返し、夫は罪悪感に、妻は嫉妬に苦しみ、そして…、というお話なんですね。これ、元ネタは古典落語の廓噺から来ていると思うんですよ。居残り左平次、五人廻し、お見立て、明烏に三枚起請に紺屋高尾、様々な良い噺が沢山ありますよね。中でも、「夢売る二人」の原型とも言えるのが「お直し」という噺でして、今回の映画の男女の設定を入れ替え、時代背景を考慮し、西川監督のアレンジを加えたもの、と言えるでしょう。それにしても、デビュー作「蛇イチゴ」の頃に較べると、脚本は益々練れて来ており、撮影も挿入音楽も良く、もう少しテンポ・アップさえすれば、海外映画祭のグランプリも充分可能、そう僕は見ています。この映画監督なら何があっても観に行く、そういう人はめっきり居なくなりまして、精々、クリント・イーストウッドぐらい、少々上から目線ですが、西川監督もそうなる様、益々の成長を期待しています。そうそう、クリントと言えば、御年82歳になりますが、今年の11月23日(僕の誕生日というのが益々嬉しいですが)に、原題はトラブル・ウィズ・カーヴ、邦題は「人生の特等席」なるロード・ムービーに主演するというのですから、これまた楽しみです。っていうか、クリントは本当に超人ですね、来年はビヨンセ主演のミュージカルスを撮るって言うんですから。

さて、映画談議がすっかり長くなりましたが、昨日読んだ本には衝撃を受けました。「夢売る二人」でも、店舗再建の為の融資が受けられず、結婚詐欺に走るという設定なんですが、この本のタイトルは「四百万企業が哭いている 検察が会社を踏み潰した日」、石塚健司さんという方が書かれ、講談社から出版されたばかりのものです。要約しますと、事件が起きたのは2011年の事でありまして、或るアパレル・メーカーが粉飾決算をしており、それを隠して銀行から融資を受けていた悪質な詐欺罪、という顛末を追ったものです。当医療法人は勿論の事、明朗に全ての決算を明らかにしていますし、それは僕達の誇りでもあります。しかし、零細企業や幾多の中小企業は、一度でも赤字を出すと銀行から融資を受けられないんですね。ですから、全国400万社のうち、7割の企業が悪い事とは知りながら、粉飾決算をしているとこの本には書かれていました。会社を守り雇用を守り、何とか自社を立て直そうと、日夜孤軍奮闘を続けている良心的な経営者の方が殆どだと思うんですよ。この本に登場する逮捕された経営者は、傾きかけた自社を再建すべく、必死に仕事をし、そして希望の光が見えて来た所を微罪で逮捕され、会社は勿論倒産、そして関連していた零細企業、アパレル関連ですから、ボタンやジッパーを扱う会社、製縫の会社、そういった多くの企業も皆連鎖倒産してしまった、という訳です。確かに粉飾は宜しくありませんが、借金無しで経営を出来る会社なんて、殆どありませんよ~。もし、この検察の論理で会社を裁くのであれば、全国の300万社近くを潰す事が可能な訳ですよね。法を遵守するのは、法治国家として当然の責務ですが、300万社を潰す事の出来る法律って、明らかに間違っています。かって日本には特高--特別高等警察--という極めて危険な組織がありました。ナチス・ドイツのゲシュタポ、旧ソ連のKGBと同様に、強い権限を持ち、尋問は拷問を繰り返し、捜査は違法だらけ、自分とは異なる思想の持ち主は全て逮捕するというもので、今の検察って、殆どそれと変わりませんよ。法律を己の都合の良い様に曲解し、善良な一般市民を逮捕出来るんですもんね。怖ろしいのは、その特高上がりの親を持つ政治家が沢山いる事なんです。敢えて書きませんが、かって長く与党だった党なんて、結構いらっしゃいますよ。政治と司法がタッグを組んだら、一般市民なんてひとたまりもありません。どうか、日本社会が正常な方向へ進む事を祈るばかりです。

今日は楽しい内容を、と思っていたのですが、最後は何だか堅いお話に終始しまして、大変申し訳ございません。来週からは快活に参ります!それでは皆さん良い週末を!
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