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✿ 花見酒 ✿

ええー、毎度毎度のお運び、誠にありがとうございます、今朝はすっかり春めいて気持ちの良い朝でございました、皆様、週末はお花見に行かれたんじゃないか、と思いますがね、実は当院も週末は金曜土曜と、二班に分かれて、夜桜を観てご酒を頂いてお弁当を食べて、春の夜 何の夢みて 蝶一つ 子規、という塩梅でございまして、それにしても夜風が身に凍みる寒さで、ちっとも酔いが廻りゃあしない、それでも大層な賑わいでしてねえ、ええ、まあ大変結構な一夜でございました。

東京スカイツリー、何でも結構な高さだそうですな、いえね、あたくしも完成途上の折にね、浅草寺の近くから見上げた事があるんですがね、ずっと見てますと、首が痛くなっちゃって参りましたが、この向島の地は、古くから知られた桜の名所でござんして、すぐ近くにあります墨田公園、八代将軍徳川吉宗公が植えたという、約七百本の桜があるもんですから、とは言っても松平健が馬に乗って大暴れ、サンバを踊る訳じゃあありませんで、この時期になりますてえと、立錐の余地も無いって言うんですか、まあ、都内の暇な連中が皆集まったんじゃねえか、てえぐらいの賑やかさでございます。

向島、と言いますと、東武東上線の曳船、なんてえ大変風情のある名前の駅を降りまして、画家の竹久夢二も愛した言問団子、この地が元祖であります桜餅、文豪永井荷風先生の花柳界を題材に取った名作「濹東綺譚」の舞台であり、そして世界のホームラン王、王選手の生誕地でございますから、一本足のレリーフなんかあったりするんですが、あたくしにとっちゃあ、古くからの花街と言う方が馴染みがありますんでね、♪君は吉野の 千本桜 色香良けれど きが多い♪、♪花にゃ誘われ ひばりにゃ呼ばれ 今日も出てゆく 春の山♪なんてえ都々逸が三味線に乗って流れて来るぐらいでして、そう、かっては千人を超える芸者衆が居たぐらいなんですが、今じゃあ料亭も十八軒、芸妓も百人に減っちまって、そりゃあ寂しいもんですが、それでも伝統文化を守ろう、ってんで積極的に動いてる、ってんですから、頼もしいじゃあありませんか、ねえ、皆さん、えっ、今時、芸妓を好むのはお前さんぐらいだって、こりゃあ参ったね、どうも…。

酒無くて 何の己が 桜かな、古今東西、花見にはご酒が付き物でございまして、貧乏長屋に長年住んでいる熊さん八さん、打ち揃いまして颯爽と向島へと参りました。「おい、熊さん。」「何だい、八さん。」「俺はよう、さっきから様子を見てたんだが、こりゃあ凄い発見をしたぜ。これで長年の貧乏とはおさらばだ。」「へえ、でもよう、お前さんの思い付きで上手く行った試しはねえよ。」「馬鹿だねえ、まずはお聞きよ、向島にはこんなに花見客が居るのに、酒屋がねえんだよ。だからよう、お互いに金を出し合って、樽酒を買ってそれを売ればボロ儲けだ。」「ははあ、偶には良い事を言うねえ。」「花見客はよく飲むから倍は儲かるぜ。二両が四両、四両が八両だ。」意気投合した二人は、酒屋に飛び込みまして、なけなしの二両をはたきまして、灘の生一本、銘酒剣菱の樽酒を買ったんですな。ところが樽酒は大層重いですし、日頃ろくな物を食べていない二人、腹が空いて動けねえ、という事に相成りました。「熊さん、俺に何か食べさせておくれよ。鰻でも天婦羅でも良いよ。」「何を贅沢言ってるんだい。この酒が売れりゃあ、後でたらふく食わせてやるさ。」「そう言っても動けねえよ、焼き芋でも良いよ。」「仕方ねえな、一貫残ってるから、これで酒を飲んで良いよ。損が無いし、倍は儲かる。」八さん、美味しそうに喉を鳴らしてご酒を飲むんですな、一貫を受け取っていた熊さん、飲み終わるのを待ち構えておりまして、その一貫を八さんに渡しまして、グビグビと飲んでしまいました。さあ、そうなりますと、元々飲兵衛な二人ですから、一貫を渡し合って交互に飲んで酔っ払っちゃう、何の事はねえ、お互いで金が行き来しているだけなんですな。それでもほうほうの体で向島に付きまして、折角の客が付いたんですが、売る酒がありません、そう、全部二人で飲んじゃったんですな。「おかしいな、二両で仕入れて酒は売り切れ、四両になっている筈だ。熊さん売上げを出しな。」「一貫しかねえよ。」愕然とした二人、二両で仕入れて一貫しかねえ、どういう訳だ、と喧々諤々の大騒ぎと成りました。「一貫出して俺が飲んで、お前が飲んで俺が飲んで、その繰り返しで売り切れだ。」「何でえ、一貫で樽酒を飲めたって事かい。」「おお、そりゃあ、ありがてえ、随分安く、酒が美味しく飲めたぜ。」

六代目三遊亭円窓師匠の十八番、「花見酒」の一席でございました、まだまだお花見の時期は暫く続きますが、どうか皆さん、くれぐれも飲み過ぎにはお気を付けになって、楽しい春の夜をお過ごし下さい…。

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