FC2ブログ

夢の酒

今年は明けるのかねえ、明けないんじゃないの、大丈夫か、なんて心配してたんですが、無事に年も越せまして、何にせよ目出度い限り、本年もお引き立ての程、宜しくお願い致します、それにしても毎度毎度のお運び、誠にありがたい事でございまして、これこうしてこの高座に毎回毎回来て下さって、お客様の声援は海よりも深く山よりも高く、仰げば尊し我が客の恩、なんっつって新年早々卒業式じゃねえ、ってね、ああ、盛大な拍手を頂いて本当に嬉しい限りでございますが、あたくし、一番励みになりますのは、薄くて四角くて嵩張らなくて、お財布に入ると綺麗に収まる紙を頂く事でござんして、って調子に乗るのもいい加減いおしよ、って叱られちまいます。

あたくし、こう見えても読書が一番の趣味、見かけに寄らないもんでござんしょう?去年も多くの耳目を引く書が発売されたんですが、最も興味深かったのは、やはり将棋の本でございました、あたくし、下手の横好き、楽屋で若い前座達を集めて将棋を指すんですな、定跡も基本もあったもんじゃねえんで、王手がかかってんのに飛車を取っちゃって負けたりなんかして、まあ、目にも当てられないとはこの事なんですが、話を戻しまして、去年出た本ってのは、光速の寄せ、の異名を持つ谷川浩司十七世名人が、詰将棋集を出したんですな、安土桃山時代から連綿と続く将棋の歴代名人は、代々の将軍に、詰将棋集を献上していた、という古くからの伝統がありましたが、何時しか廃れてしまいまして、江戸の世から225年の月日が流れたんですな、谷川名人は忙しい対局の合間をぬって、コツコツと造り続け、平成の今、将軍様は居ませんから、書籍という形にしまして、ファンに楽しんで貰おう、という形で出版した訳でございまして、その名も「月下推敲」、なんと格調高い題でしょうか…、ねえ、その伝統を見直そう、という心意気が嬉しいじゃござんせんか、おまけに、昔ならば江戸城にいらっしゃった将軍様しか見られねえものを、あたくしの様な人間までが読めるんですもん、ああ、ありがたやありがたや、え、勿論買いましたよ、買ったはいいんですがね、その詰将棋、難しい事厳しい事、ひとつも解けやしねえ…。

その江戸城では、毎年、一般参賀が行われてますな、昨日も、天皇皇后両陛下に皇太子ご夫妻のお元気なお姿も見る事が出来まして、特に雅子妃殿下の笑顔を見られて、本当に喜ばしい事と、あたくし、不覚にも涙がこぼれました。国旗を振る国民も、それにお応えする皇族方も大変素晴らしく、「被災地の復興が進み、この年が国民一人一人にとり、少しでも良い年になるよう願っています。」という陛下のお言葉に、またまた涙しまして、この歳になりますと、どうも涙もろくていけねえや…。

初夢と申しますと、一富士二鷹三茄子、四扇五煙草六座頭、なんて申します、一二三は良く知られてますんでね、今日はお客様にちょいとお勉強して頂いて、四の扇は末広がり、五の煙草は煙が上に上がるんで運気が上昇の意、六の座頭は鍼灸に按摩の職で頭を丸めてますから毛が無い、怪我無いという洒落でございます、満場の皆様方はさぞ愉快な初夢をご覧になったと思いますが、いかがでござんしょうか?あたくしは新年早々連日の様にお神酒を少々頂き過ぎちゃいまして、夢なんて見やしません、こうして喋ってましても、フラフラしっぱなし、ねえ、お酒は大変結構、美味しいもんでして、百薬の長、なんて申しますが、飲みすぎはいけません、それに時と場合をわきまえる必要があります様で…。

火事と喧嘩は江戸の華、なんて申しまして、特にこうして寒い日が続きますと、空気は乾燥してます上に、当時は木造建築ばかりですから、火が付きますとさあ大変でして、お江戸八百八町があっと言う間に消えて無くなっちゃう、ってんで、道楽者ばかりの町内の旦那衆が集まりまして、手に手に拍子木を持ち、火の用心火の用心、と言って廻る事と相成りました、同心、今でいう警察もこれには感心、殊勝な心掛けじゃ、番所、今でいう駐在所ですな、これを使って宜しいと快諾されまして、旦那衆の心意気は良いんですが、日頃から良からぬ遊びに長けた連中、腹なんて座ってませんから、不平不満ばかり、特にこの寒さには閉口しておりました、悪いことに、番所に酒を持ち込んだ野郎がおりまして、皆、遠慮をしておりましたが、寒さに耐えきれず、つい飲んじゃったんですな、「これは薬じゃ、煎じ薬じゃ」てな言い訳を致しまして、挙句の果てには全員が飲んでしまう始末、「薬だけでは暖まらぬ、体を温めるには口直しが必要じゃ…」という訳で用意しましたものはなんと猪鍋、これでは只の宴会、寒さを理由の新年会でございます、やがて宴もたけなわ、小唄が出て都々逸をうなり、病人には綺麗どころの看病人が必要じゃ、呼んで参れ、あっはっは、と笑っておりますと、番所を激しく叩くものがある、恐る恐る開けてみますてえと、廻り方同心の見回りでございました、慌てふためく一同、慌てて酒から鍋から隠すんですが、部屋にこもった酒と猪肉の匂いは隠し通せるものじゃあございません、「これは煎じ薬でして…」の言い訳も段々小さくなりまして、怒り心頭に見えた同心でしたが、「実はわしも風邪気味での、煎じ薬を貰えるか」と破顔一笑、この同心も飲兵衛だったんですな、一同安心して飲めや歌えやの大騒ぎ、ところがこの同心、あまりにも飲むものですから、お酒が無くなったんですな、困り果てた旦那衆が恐る恐るそう告げますと、「しからば拙者はもう一回りしてまいろう。二番を煎じておけ。」

去年今年 貫く棒の ごときもの、これは高浜虚子の句でございますが、あたくしも一句、出羽桜 十和田正宗 明ケ烏、この句を復興にかける東北の蔵元の皆様方に捧げまして、どうか良い年でありますように…。本年も大分下郡病院並びに本ブログをご贔屓の程、何卒宜しく申し上げます…。お足元がお悪い様で、どうかお気を付けてお帰りになって下さいまし…。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

しもごおり

Author:しもごおり
OSHブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
QRコード
QR