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迎え火や 父のおもかげ 母の顔

野分のまたの日こそ、いみじうあはれにをかしけれ、清少納言がこう書くと、台風も何だか風情があるんですが、今は長崎の西南部部を東上中、どうやらお昼過ぎには博多に上陸、其の後本州を横断する由でして、どうぞ皆様、まめに天気予報を確認されて、被害が出ない様、どうかお気を付け下さいませm(__)m。

つい先日の新聞各紙で、ルイ・ヴィトンを初めて買った日本人が紹介されていました。此れ、意外な事に男性でして、何と、自由民権運動の大物、明治維新の立役者の1人、土佐の板垣退助が、ヴィトンの旅行鞄をパリで購入したとか。其の鞄、写真で見ましたけれど随分とクラシカル、でもヴィトンの雰囲気はしっかりとありまして、昔のお侍はセンスが良く、お洒落だったんですねえ。此のヴィトンの鞄、僕の亡母も愛用していまして、彼女がとりわけ好んだのは、所謂オーバーナイト・バッグ、1泊用の小ぶりな物でした。男性の鞄って、どうしても大きく、兎に角重いんですよね。母の形見のヴィトンのガーメント・バッグ、此れは男性用でして、僕が成人の折に渡す心算だったと聞きました。此れ、スーツをハンガーに掛けて運べる鞄なんですが、ヴィトンの此のタイプのメンズは殆ど見かけた事がありませんし、カッコ良いのは間違い無いのですけれど、重た過ぎますから、滅多に使いませんねえ。其の母が大層欲しがっていましたのが、アメリカはボストンの老舗のレザーブランド、マーク・クロスのオーバーナイト・バッグでした。此れ、ヒッチコックの映画「裏窓」で、グレース・ケリーがさり気無く持っていた物、黒革でカーヴィで愛らしくシック、とっても上品なお泊り用の鞄でした。

元日や ひそかにをがむ 父の墓、秋風の ことしは母を 奪いけり、早い物で、僕の両親が亡くなって、かなりの月日が流れました。我や先、人や先、朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり、パーソナルな話で大変恐縮なのですけれど、実は昨日、亡母の三十三回忌でして、僕、お寺に行って来ました。三十三回忌と謂えば弔い上げ、五十回忌もありますけれど、一応は此れで1つの区切りとなりました。母は36歳だったかな、子宮癌を発症、数年間闘病生活を続けたのですけれど、結局、40歳で亡くなりました。短い人生でしたが、濃密で凝縮された一生であり、40年間を疾風怒濤、将に born to run でして、彼女なりに全力で駆け抜けたかと思います。短い命だけれど、春夏秋冬があり、まァ、色々と迷惑な事も多々ありましたが、彼女はきっと、真剣に生きたのではないでしょうか。恐らく悔いは無かったでしょうし、以って瞑すべし、合掌、礼拝であります。

でね、僕、迷惑をかけ通しの不肖の息子であり、悪い子だったなァと思うんですが、高校生の時分に、亡母とは何度か、酒席を共にした事があるんですよ。当時の先生方、ごめんなさいm(__)m。彼女は左程強くは無かったんですが、陽気で楽しいお酒でした。でもね、僕、後悔していますのは、高校生で無収入でしたから仕方が無いんですが、母に旅行をプレゼントしてあげたかったんですよね。先に触れた様に、全力疾走の人でしたから、偶にはのんびりと温泉に浸かってリラックスする様な事があれば、幾ら何でももう少し、長生き出来た気がします。まァ、此れは今更謂っても詮無い事、兎に角冥福を祈っています。

閑話休題、其の温泉なのですけれど、本邦では古来から、貴賤を問わず、本当に多くの人達が利用して来ました。夫々記録が残っていまして、恐れ多くも歴代天皇家の方々に公家さん達。鎌倉期の源頼朝。南北朝期の新田義貞。戦国期の武田信玄に上杉謙信。織豊期の黒田官兵衛に豊臣秀吉。江戸期の真田幸村に徳川家康。皆さん、大河ドラマの主役達でありまして圧巻ですよねえ。僕、かって、山口の湯田温泉に行った事があるんですね。俳人の種田山頭火や詩人の中原中也に所縁のある、山間の閑雅な温泉郷なんですが、彼の地には、松田屋ホテルと謂う旅館があります。其処には維新の湯と銘打ちまして、歴史上の人物達が汗を流したお風呂があるんですね。長州の高杉晋作に桂小五郎、伊藤博文に山縣有朋、井上薫に大村益次郎。薩摩の大久保利通に西郷隆盛。土佐の坂本竜馬。維新期のオールスターが皆此処で入浴した由、僕、折角ですから同じ湯に入りましたけれど、何だか身震いする感があり、自分も歴史上の人物になった気分、「日本の夜明けは近いぜよ」「幕府とは戦でごわす」とか謂いたくなり、とっても興奮しましたもんね♨

さて、此の温泉、実は日本文学とは密接な関係があるんですね。先ずは矢張り、俳人の小林一茶から参りましょう。一茶は信州の産ですから、現在の長野県、温泉が多いものですから、暇を見つけてはしょっちゅう入湯しているんです。春風に 猿も親子の 湯治かな、寝ころんで 蝶止まらせる 外湯かな、出湯から 首ばかり出して 雪見かな、こんな句が沢山ありまして、とりわけ酷いのが、座敷から 湯に飛び入るや 初時雨、ですねえ。どうやら一茶先生、芸者衆を呼び、散々酔っ払って全裸になり、其のまま湯船に飛び込む大騒ぎだったそうです。川端康成の「伊豆の踊子」の舞台は、天城山の湯ヶ島温泉でしょ。同じく川端先生の代表作に、「千羽鶴」「波千鳥」がありまして、兎に角モテモテの青年が主人公なのですけれど、此のアンちゃん、全国各地の温泉に行っちゃあ、Hな事してるんですから…。確か作中、熱海に伊豆、そして大分の九重の温泉が書かれていました。志賀直哉の「城崎にて」「暗夜行路」は、其の名の通り兵庫の城崎温泉が舞台です。芥川に花袋、鏡花に藤村、井伏鱒二に岡本綺堂等々、名立たるビッグ・ネームがすこぶる愛したのは、伊豆の修禅寺温泉でした。僕、此処は亡母と行った事があるんですが、弘法大師が湧出させたと謂う言い伝えがあり、歴史が古く趣があり、閑静な佇まいの温泉郷でして、ははァ成程、此の静かな環境ならば、落ち着いて執筆出来た筈と、膝を打ちました。谷崎の作品に良く現れますのは有馬、三島は下田を、林芙美子は伊香保をこよなく愛し、尾崎紅葉の「金色夜叉」は熱海、川端の「雪国」は越後湯沢、漱石の「坊ちゃん」は道後、「二百十日」は阿蘇内牧、太宰の「姥捨」は群馬の谷川温泉、井上靖の「氷壁」は岐阜の新穂高温泉が舞台なんですね。因みに永井荷風は、芸者と泊まりがけで遊びに行っている最中、お父さんが急病で倒れ、死に目に会えなかったのですけれど、其の行き先は箱根温泉でして、アッ、此れは文学とは全く関係がありませんね、失礼致しましたm(__)m。

僕、最近、松本清張を再読しているのですけれど、「Dの複合」と謂う小説があります。其処に出て来ますのが、京都の奥丹後の木津温泉でして、清張先生も又、ご自身の作中で、全国各地の温泉郷を相当取り上げています。日田、有馬、静岡の船原、伊豆、熱海、山梨の湯村に下部、能登に柏崎、山形の五色…。清張先生の場合、徹底した緻密な取材ですから、激務の中、実際に現地に足を運び入湯されていまして、だからこそ文章にリアリティがあるんですよね。余り謂われないんですが、清張先生の風景描写も流石でして、冷徹な観察眼が光ります。実際、どの小説も面白いのですけれど、清張先生の唯一の欠点は、作中、色白で豊満で妖艶、かつコケットリーな女性は、必ず惨殺されるんですよね。其の手の女性から手酷くフラれたとしか思えないんですが、其処だけ我慢すれば、清張先生のどの作品もお勧めですよ~♨

花の雲 ははのかたちに ははの灰、今日の拙ブログは個人的な話が多く、申し訳ございませんでしたm(__)m。母の遺志を継ぎ、当院の当職に居る間、誠心誠意頑張る所存です。今後とも拙ブログならびに当院に、叱咤激励ご指導ご鞭撻の程、何卒宜しくお願い申し上げますm(__)m。
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