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愛宕山

あの東北の震災と原発のメルトダウンから、早6年が経ちました。犠牲者の方々のご冥福を謹んでお祈りします。そして、此の様な惨事を決して繰り返さぬ様、一刻も早い原発の廃炉を、皆で進めましょう。そして、東北の復興の為、全国民が力を合わせ、素晴らしい国になる事を願っています。黙祷。

とまァ、柄にも無く、のっけから堅い事を申しまして恐縮なんですが、こういう辛い時は笑いが一番ですな。しかしあたくし、何せ久方振りの高座でありまして、どうも照れますな。あたくしなんざァ、とても偉そうな事を言える身分じゃござんせんが、最近ねェ、右を向いても左を見ても、無性に苛々する事ばかり、腹の虫が収まらねえとは此の事でありましょう。「日本経済研究センター」なる、老舗のシンクタンクがあるそうでして、此処が、福島の原発事故の、国民負担について、試算をしたそうでございます。するてえと、何とまァ、最大で70兆円も掛かるんだそうで。あたくし、日々の高座を務めさせて頂いて、お客様がお帰りになる際のはね太鼓の音を聞きながら、もり蕎麦と熱いご酒を頂くのがささやかな楽しみなんですが、此れが大体1000円なんですな。70兆と謂いますてえと、其れが、うう~ん、あたくし、算数の方がからきし駄目で此の世界に入ったもんですから、少々お時間を頂いて、え~とえ~と、700万杯のもり蕎麦とお銚子ですか、目が廻りそう…。しかしねえ、我が国の現金収入、あたくし共が支払っている税金ですな、此れが確か50兆円ですから、原発なんざあ、どれだけの金喰い虫なんだか分かりゃあしねえ、とっとと止めた方が良さそうですな。おっ、盛大なる拍手をありがとうございます、ありがとうございます。もう少しお手を叩いて頂くと、俄然面白くなって参りますよ~。挙句の果てには、ODAってんですか、色んなお国の方々に、大層気前良く、お足をばら撒いてますな。何処から出て来るお金なんだか、そりゃあ税金からなんですが、国の財政は火の車なのに、日本は 今各国の 太鼓持ち、一体全体、何をやってるんだか、正気の沙汰ではございません。それにしてもねえ、総理ってなあ、良いご身分ですな。福島の原発だってねえ、大丈夫だ大丈夫だ、矢鱈と言ってますが、放射能は未だ、じゃかすか漏れてんでしょ。大丈夫 貴方が言うから 不安です、てなもんですよ。おまけにね、総理と仲良くすれば、お国の土地をタダで貰えちゃう。太鼓持ちの真似でヨイショをすれば、たっぷりとご馳走になれるんですから、おかしな世の中でありましょう。しかしまァ、此の太鼓持ち、江戸の時代から居たそうでして…。

時は遡り元禄時代、花のお江戸でしくじりをやらかして、京の祇園へと流れて来ました太鼓持ち、崇と言う者がおりました。ちょうど今の時分、何だか春めいて来まして、お医者様のお旦の達と連れ立ち、野駆けに出たんですな。此の野駆け、今で謂うピクニックであります。五段重ねのお重には、鰻にからすみに玉子焼き、蒲鉾に山鯨に鮎、山海の珍味がぎっしりでして、灘のご酒も樽ごと用意、此れらを皆崇に持たせ、お旦の達は、芸者衆の綺麗処や舞妓、お茶屋の女将をお供に、祇園を出まして鴨川を渡り西へ西へ、堀川を過ぎまして、二条のお城を後目に、道端の枝垂れ桜を愛でていますと、野辺へとかかって参ります。野には陽炎が燃え、遠くの山々には霞がたなびき花盛り、天では雲雀が啼き、麦は青々と伸び、ぽかぽかと暖かく春うらら、誠に良い心持であります。一行が目指しますのは愛宕山、小さな山でございまして、ピクニックをするには手頃な高さなんですな。それでも、元々は江戸っ子の崇、関東には山なぞ余りございませんから、着いて行くのが精一杯、這う這うの体で漸く山頂へと辿り着きました。

お旦の達は、綺麗処に囲まれまして、非常にご機嫌、「センセ、近頃お見限りじゃないの、私の気持ちを知ってる癖にいけずやわ~♡」「私にも注いで下さらない、はい、ご返杯♡」「苦しうない、近う寄れ、良きにはからえ~♡」とまァ、いやはや何とも、聞くに堪えない会話を延々と繰り広げておりました。太鼓持ちの崇、必死に場を盛り上げようとするのですが、お旦の達、何せ色の道にしか興味がございませんで、芸妓達といちゃいちゃするのに必死なんですな。崇が頂いたのはお酒では無くお茶け、卵焼きと思えば色だけ同じな沢庵、蒲鉾と思えば色だけ同じな大根の切ったの、すっかり閉口してしまいました。

其れでもお旦を喜ばせなくてはとても帰れないと、其処で目に付きましたのが、山中にあった売店でして、此処では、「かわらけ」を売ってたんですな。此の「かわらけ」とは、素焼きの杯でございまして、高い処から願を掛けて其れを投げると。そうしますてえと、願いが叶うという按配でして、まァ、厄払いの一種ですな。秘かに其れを買い求めまして、「旦那さん旦那さん、呑んでばかりでは身体に障りましょう。此処はどうです、かわらけ投げも一興では」「うん、面白い、先ずは芸者衆が投げてみい」「あれ、センセ、上手く投げられな~い♡」「教えて下さらない…♡」「手を握って投げさせて♡」、綺麗処から誉めそやされ甘えられ、達も益々嬉しくなったんですな。「こんな物があるんだが、此れでも投げてみるか」と、懐から出て来ましたのが、目にも鮮やかな小判でありまして、其の数何と30枚、芸者衆も崇も此れには吃驚、「旦那、余りに勿体無い」と、慌てて止めたんですな。

ところが、酒も廻り気分が大きくなった達、どうしても投げると言い張ります。谷底を目がけまして、大きく振りかぶり第一投、今日もWBCの野球の試合がありますけれども日本頑張れ、其れはさておき、見事なスピードとコントロールでして、飛んで行く小判は陽の光を浴びてキラキラキラキラ、崖の下へと吸い込まれて行きました。30枚全てを投げ終えまして、一同何だか気が抜けてしまったのですが、其処で崇はフト気付いたんですな。ああ清々したと言う旦那に向かい、「ところであの小判、どうなるんですか?」と問いますと、「そりゃああれは、投げてしまったんだから、拾った奴にやるさ」、俄然張り切った崇、傍らにありました芸者衆の日傘を手に取りますと、其れを開きまして、崖へと飛び降りました!ふうわりふわり、良い塩梅に傘と崇はゆっくりと谷底に見事に着地致しまして、四散した小判30枚を全て手に入れますと、「天晴、見事じゃ、其の小判、全てお前にやろう」、崖の上から声が聞こえたんですな。やれやれ此れで一財産が出来た、明日からのんびり暮らすかと、其処でハタと気付いたんですな。降りたは良いが断崖絶壁、登る手段がありません…。必死に考えた崇、お金の欲とは怖いものでして、自分が着ていた襦袢から帯からふんどしまで割きまして、全裸となり、其れで縄を造ります。其の縄の先に手頃な石を結び付け、谷の斜面に生えた竹の先っちょを目がけ、縄を巻き付けたんですな。そうしまして、思い切り竹を引っ張り、充分にしならせてから、力いっぱいジャンプしますてえと、あれまァお見事、鳥の様に空を舞い、崇は全裸のまま、崖の上に見事に着地したんですな。何だかオリンピックにでも出られそうでして、太鼓持ちなぞ辞めた方が良さそうですが、「これまたお見事じゃ。しかし、前の物は早く隠せ。」「此れは無礼を致しました。」「しかしまァ、凄い男じゃのう、お前は。先の小判は好きに使うが良い。今日は良い物を見せて貰った。ささ、どうした。早く前を隠さぬか。そして、さっきの小判はどうしたのじゃ。」「昇るのに夢中で、忘れて来ました…。」

戦後最大の名人と呼ばれた、八代目桂文楽師匠の十八番、「愛宕山」の一席でございました。ありがとうございました、ありがとうございました。足元が悪うございます、お帰りはどうぞお気を付けて。明日、又此の高座でお会いしましょう、ありがとうございましたm(__)m。
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