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☾☆ 夜の慣用句 ★☽

ええ~、本当に久方振りの高座でございまして、些か緊張の体ですが、しかしまァ、毎日毎日、蒸し蒸し暑いのに、これこうして多くの方々に集まって頂いて、あたくし、三国一の果報者でございます。ありがとうございます。ありがとうございます。もう少し拍手を頂けると、此の後の話が俄然面白くなっちゃうんですな。おや、一段と拍手が大きくなりました様で、ありがとうございます。

江戸っ子の 生まれ損ない 金を貯め、なんてえ古川柳がございますが、古来から、金に卑しい輩は嫌われますな。けちん坊だ、しみったれだ、しわい奴だ、そう申しますけれど、呻る程お金があったって、決してあの世には持って行けません。朝には紅顔ありて夕には白骨となれる身なり、そして行くのは三途の川、ありゃあ、渡し船の船頭であります、爺さん婆さんの鬼どもに六文銭を渡すそうですな。あの世に持って行けるのは、精々其の六文銭が関の山、人様の怨みを買って、沢山の金をこさえたって、何にも良い事はございません。でないと、何処ぞの都知事の様に、あんな嫌な顔になっちゃうんですな。政治資金という美名の下、高級すき焼肉に絵画に漫画、ワインにホテルに海外旅行、土産物に車にイタリアン、幾ら何でもやり過ぎでありまして、羨ましいぞこんちきちょう、此れは悪い冗談ですが、とうとう年貢の納め時、漸くお辞めになりました。皆様、さぞ清々したと思うんですがね、我らが偉大なる総理だって、何れ菖蒲か杜若、決してひけを取りませんな。安倍クン、何を血迷ったか、政治資金の報告書に堂々と、女性の高額コスメ商品、ジュエリー、美容水って、アンタねえ、女装の趣味でもあんの!?これまた酷いのは、アイスのガリガリ君とありまして、あのねえ、あんなの100円ぐらいでしょうよ。自分で買えないのかねえ、全く。しがないあたくしだって、其れ位は買えまさあね。そしてね、スナックだクラブだキャバクラだ、60回分の飲み代を、政治資金として計上しているんですな。ご酒ぐらい、テメエの金で呑めってえの。其れにしても品性下劣、卑しい男だねェ…。あたくしなんざあ、♪ぼろは着てても心の錦 どんな花よりきれいだぜ♪、ひい爺さんの代から、自腹で呑んでますぜ。

其のひい爺さんなんですがね、明治の男なんですが、これがまァ、宴席をすこぶる愛しておりまして、昭和の初めの別府の街、芸妓衆がご出勤の夕闇迫る頃、必ず散歩をして目の保養をしていたそうでございまして、殿方はやはり、綺麗で若いご婦人方が居る席を好む様ですな。其れは、江戸の昔から、平成の今でも変わらない様でございまして…。

「部長、部長。今日の一次会なんですが、居酒屋で構いませんか?」「おお、構わんよ。今夜は飲み会のみかい?」「は?」「いや、飲み会のみかい、って2度言わすなよ!」「いえ、二次会も考えてはいるんですが…」「ほほう、居酒屋でガソリン入れてから夜の蝶々採集かい、それとも夜のパトロール?はたまた夜のクラブ活動かい?君も隅におけんね~。」「いえ、まあ、ハハハ…。」呑む前から、早くもメートルが上がると申しますか、親父ギャグ全開の部長さんでありまして、昭和生まれの此のオジサン、若い連中と呑む機会なぞ、そうそうありませんから、部下達の苦虫を噛み潰した様な顔を知ってか知らずか、兎に角嬉しくて仕方無いんですな。と、一堂賑やかに有楽町のガード下を抜けまして、新橋まで辿り着き、小体な居酒屋に落ち着きました。のっけから、部長さん、「無礼講なんだから気を使えよ!」とご機嫌でありまして、「おいおい、乾杯ってなあ、空のグラスじゃ出来んだろ~。」てな按配でしたが、枝豆だ焼き鳥だ、冷奴だ唐揚げだ、そして刺身に煮物と、つまみも夫々の腹に収まり、ビールも十数本は空きまして、段々と会も盛り上がって参りました。「宴も高輪プリンスホテル!」とはしゃぐ部長でありまして、若手の皆さん、こりゃいかん、もうおつもりにしようと、「部長、そろそろ…」と暗にお開きを勧めたんですな。「んん~、何だァ。ハイボールは未だ早くないか?よおし分かった、皆まで言うな、お姉さ~ん、人数分のハイボール!ウイスキーも愛情も濃い目に入れてね~♡」、ダメだこりゃ…。酔眼朦朧の部長、学がある処をアピールしたかったんでしょうか、「ウン、君達の座右の銘は何だ?」と聞き始めました。座右の銘、即ち、日々自らを律する為の心構え、其れを表現した諺ですな。「よおし、右から順に言って良いぞ!」「ええと、ええと、僕はですね、馬の耳に念仏。」「ハイ、私は、恩を仇で返す。」「うう~ん、飼い犬に手を噛まれる。」、何だか此れ、遠回しに部長への嫌味になっている気もするんですが、「はァ~。揃いも揃って学が無いねェ。少年老い易く学成り難し、ぐらい言えんかねえ。何だか白けるなァ。よおし、夜の盗塁王を狙って、次行くかァ!いざ、キャバクラ!此れ、いざ鎌倉の洒落だぞ!?ではキャバレンジャー、出動!」、最早暴走気味の部長さんなんですが、何と言っても一応は上役、一堂文句は言えず、新宿は歌舞伎町へと向かいます。

さてさて、髪を盛りに盛り、まつ毛のエクステはバッサバサ、床を引きずる様なドレスのお姉さん方が、部長一堂をお出迎えしまして、若い衆は慣れたもの、紳士的にお酒を酌み交わし、寛いでリラックスしておりました。問題は部長さんでして、両隣に座ったお姉さん達の太腿をツンツン、馴れ馴れしく肩に手を廻したりして、すっかり上機嫌であります。何を思ったのか、「君達の座右の銘は?」って、未だやっていやがる。「え~。分かんないけどォ、地獄の沙汰も金次第?」「あたしはァ、棚からぼた餅?」ですって。「揃いも揃って学が無いねェ。ちょっとお手洗い。」と部長が席を外すや否や、お姉さん方からは苦情の連発でありました。「何、あの助平ジジイ、ずっと太腿触ってんだよ!」「胸元ジロジロ見てた!」、部下達が必死に平謝りしまして、違うお姉さん方に交代して貰ったんですな。手洗いから戻った部長、新しいお姉さん方に大興奮、またまた太腿をツンツン、胸元はジロジロ、「血液型は何型ですか~?」との質問に、「O型だよ。まァ、人の器も大型とは良く言われるんだが…。」と、悦に入っておりました。部下達も夫々盛り上がって来たのですけれど、ふと気付くと、部長さん、背筋を伸ばしきちんと坐ってはいるのですが、目は泳ぎ、頭に巻いていたネクタイはきちんと締め直し、明らかに様子が変なんですな。「あれ、部長、どうしたんですか?随分酔いました?お水貰いますか?」「いや、いい…」「元気無いじゃないですか~。さっきの聞かないんですか、ほら、あれ、座右の銘!」すると部長さん、消え入る様な声で、「其れ処じゃないよ、此れがホントの四面楚歌、左右が姪なんだ…。」

生粋の江戸っ子、柳家喬太郎師匠の十八番の新作落語、「夜の慣用句」の一席でございました。足元が悪い中、高座までお越し頂き、ありがとうございます、ありがとうございます。どうぞお帰りはお気を付けて、又明朝お会いしましょう、御機嫌ようさようなら。
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