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寛平御記

僕、週末に大型書店に行き、数時間掛けて本を選ぶのが、大いなる愉悦と申しますか、1週間で最も寛げる一時なんですね。先々週ですか、文庫のコーナーを見ていましたら、森鴎外の新刊が出ていまして、僕、「舞姫」から「阿部一族」から、「青年」から「ヰタ・セクスアリス」から、「雁」から「渋江抽斎」まで、一通り目を通していた心算でした。でもね、其の新刊、「椋鳥通信」とありまして、確かに森鴎外著なんですが、こんな作品、見た事も聞いた事も無く、取りも直さず、早速購入しました。お部屋に戻って一読した処、吃驚しましたねえ。一言で申しますと、森鴎外という当代きっての知性が記した、明治時代のツイッターの様な物だったんですね。当時のありとあらゆる世界のニュースが、最先進国である欧州各国の新聞に書かれているのですが、其れをシベリア鉄道経由で入手、鴎外自身が取捨選択し翻訳、短い文章で、本邦に紹介しているんですよ。

1909年9月3日 ジョゼフ・トムソンの演説。石炭が尽き、水力も不足になる頃には、太陽の力を工業に利用するのではないか。太陽は、1エーカーにつき7000馬力のエネルギーを送っているのを、我々は未だ利用するを知らぬ。追っては、サハラ砂漠が世界開発の中心になるやもしれず。

1909年と謂えば、明治の終わりでありまして、其の時点で、太陽光発電のニュースを欧州経由で紹介するだなんて、流石は鴎外先生でありましょう。其の他、パリのエッフェル塔で遠距離無線の実験をした、或いは海底通信ケーブルについて触れており、鴎外先生、最新のテクノロジーを、日本にせっせと紹介していたんですね~。其の他少々ご紹介しますと、「客船タイタニック号沈没す」「キュリーなる夫人、メダルを貰った由」「発明家エジソン、蓄電器を造る」「イタリーのナポリにポンペイ為る地あり。一市民が穴を掘っていた際、古代ローマ時代の別荘を掘り当てる」、うう~ん、何だか古のタイムカプセルを開けて、100年前の新鮮な息吹を感じた様に思いましたし、文明批評も素晴らしいんです。

1910年7月7日 フランス人は子を2人しか育てず人口が減じていく。救済策は、未婚男児の課税である。此れは駄目らしい。其れより3人目を生んだ者に、10年間金をやるが良い。

へええ、100年前のフランスも、現在の日本同様、少子化に悩んでいた訳で、其れに対する鴎外の感想が、現在ならば民主党の子供手当ですよねえ。将に巻を擱く能わず、何だか灘の生一本の樽酒を味わっている気分でありまして、こんな銘酒を一気に呑むのは勿体無い、僕、晩酌の様に、毎晩少しづつ読んでいます。さて、此の「椋鳥通信」、4年程続いた連載だったそうですが、ぶ厚い文庫本で3冊から成るんですね。当時の鴎外先生は、陸軍軍医のトップの重職にあり、多くの小説を手掛けていた訳でして、其の激務の中、膨大な量の海外の新聞を翻訳していたんですから、寝る間も無かったと思います。僕、何故鴎外先生が此の様な仕事を手掛けたか、其れは、日本人の教養を少しでも引き上げよう、そうした考えだったと思うんですよね。本のタイトルである、椋鳥とは、やかましい田舎者の集団、という意味があるそうでして、鴎外先生はドイツを中心に世界を知っていましたから、日本人を啓蒙しよう、決して井の中の蛙大海を知らずになるな、という事だったんじゃないかなァ。僕、其処に、鴎外先生の知識人としての、そしてジャーナリストとしての使命感を感じます。

でもね、日本人って本当に面白く感じますのは、江戸期から、ジャーナリストが既に居たんですよね。藤岡屋由蔵、という人物でして、殆どの方がご存じ無いと思います。さて、此の由蔵さん、11代将軍徳川家斉公の時代の群馬の産、上京しまして、現在の秋葉原の辺りで古本屋を始めたんですね。何を思い立ったのか、江戸中の事件や出来事、噂や醜聞の記録を始めまして、此れが大人気となり、其れで食べていたそうでして、現在の新聞の走りでしょうか。由蔵さんが長年集めた記録が、「藤岡屋日記」全152巻でありまして、此れ、江戸期の風俗を知る、極めて貴重な資料になっています。

さて、鴎外先生の様な、明治期の知識人は、此の国を良くしようと、新聞社を設立し、ひたすらに啓蒙活動を手掛けました。成島柳北、福地源一郎、徳富蘇峰、皆さんそうなんですね。其の筆頭が、慶應義塾の創始者、福澤諭吉先生でありましょう。名門慶應義塾を造るだけでは飽き足らず、「時事新報」という新聞社も創設、専修大・一橋大・北里大学病院の設立にも多大な寄与をしたんですから、大分が産んだ郷土の誇り、大教育家ですよね。さて、其の慶應義塾の文学部の顧問として、長年関与したのが、先に挙げた森鴎外先生でして、其処で教授に大抜擢されるのが、若き文豪、永井荷風だった訳です。福澤先生~鴎外先生~荷風先生と繋がるのですけれど、お三方とも、当代一流の知性でして、皆さん、文学だけで無く、生活に密着したルポルタージュと申しますか、後世の我々にとって、大変貴重な記録を残されているんですね。例えば福澤先生の「西洋旅案内」「世界国尽」なんて、そうですねえ、今で謂えば、明治期の「地球の歩き方」なんですよ。各国の諸事情は勿論の事、洋式トイレの使い方から旅行保険まで、懇切丁寧に説明してあるんですね。鴎外先生は先の「椋鳥通信」、荷風先生はアット・ヒズ・ベストである、「断腸亭日乗」でしょうねえ。「断腸亭日乗」は、昭和期の政治経済風俗に触れた、唯一無二の貴重な資料であります。未読の方は是非ご一読を。

さて、知識人について縷々綴って来ましたが、スポーツマンの究極の目標は近代5種と言われます。即ち、マラソン・フェンシング・水泳・馬術・射撃の総合点を争うんですね。僕、知の近代5種は何かと考えましたら、先ずは歴史を深く知っている事が挙げられます。以下順不同に、古文漢文・短歌・外国語を含む語学力。美や芸術を解する審美眼。此の分野なら負けないぞという専門性。そして、状況に応じた洗練された立ち居振る舞い、でしょうか。蛇足ながら、スポーツを愛する健全な心身と、誠意や謙譲や努力といった、紳士淑女に必須な条件を持つ事は当たり前です。僕、上記の条件を備えた人が、真の知性を持つ方、そう思えてなりません。翻って、今の日本を見ますと、先の条件に当てはまる人って、僕を含めて全くいないんで、愕然としました。降る雪や 明治は遠く なりにけり、何だか哀しくなってたんですが、居たんですよ♡其れは、天皇陛下のご一族です。皆様、ちょっとお考えになられたら、上記の条件を全て満たしているのがお分かりでしょう。エッ、でも、天皇陛下の専門性って何?と思われるかもしれません。安心して下さ~い、昭和天皇は生物学者ですし、今上天皇は魚類学、ハゼの研究の世界的権威です。皇太子殿下は、交通や流通の歴史学の泰斗であります。僕、皇族の皆様方は、此の国には必ず必要、そう確信していますけれど、そりゃそうですよね、戦を憎み民を愛する高潔な人格、素敵な和歌を詠み外国語を解し専門分野をお持ちの知性、諸外国のどの首脳よりも品のある立ち居振る舞い、3拍子揃ってますもん!僕、少しでもそうなれる様、努力して参ります!
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