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☃ 行き暮れて雪 ☃

夜来風雨声 花落知多少、昨夜の大分は、凄まじい雨と風でした。此れ、どうやら全国的に広がる模様でして、皆様、大丈夫でしたか!?こういう大荒れの天気になりますと、必ずと言って良い程、田畑や屋根瓦や河川の様子を確認に行かれる方がいらっしゃいますけれど、大変危険ですから、どうぞお止めになって下さいね。僕、何時もの愛犬の散歩も今日は流石にキャンセル、彼女もさぞかしお外に出たかったでしょうが、勘弁してねm(__)m。

省線三宮駅構内浜側の、化粧タイル剥げ落ちコンクリートむき出しの柱に背中丸めてもたれかかり、束に尻をつき、両脚まっすぐ投げ出して、さんざ陽に灼かれ、一月近く体を洗わぬのに、清太の痩せこけた頬の色は、ただ青白く沈んでいて、夜になればぶる心のおごりか、山賊の如くかがり火焚き声高にののしる男のシルエットをながめ、朝には何事もなかったように学校へ向かうカーキ色に白い風呂敷包みは神戸一中ランドセル背負ったは市立中学、県一親和松陰山手ともんぺ姿ながら、上はセーラー服のその襟の形を見分け、そしてひっきりなしにかたわら通り過ぎる脚の群れの、気づかねばよしふと異臭に眼をおとした者は、あわててとび跳ね清太をさける、清太には眼と鼻の便所に這いする力も、すでになかった。

この異様さをも感じさせる長いセンテンス、此れこそが、つい先日お亡くなりになった、故野坂昭如先生の真骨頂と言えましょう。濃厚かつ緊密、主観から客観へと視点が入れ替わる独特の文体ですよね~。昨日の異常気象と激しい雨は、野坂先生の野辺送りの涙雨だったかもしれず、此処に謹んでご冥福をお祈り致します。どうか安らかにお眠り下さいませ…。

さて、先の文章は、アニメーションにもなりました、「火垂るの墓」の冒頭部分なんですね。このアニメ、ご覧になられたらお分かりでしょうが、号泣必至でありまして、僕、なるべく観ない様にしているぐらいなんです。僕、かって野坂先生の一連の作品は、耽読した経験がありまして、一種の中毒性があると申しますか、途轍も無い才人であった事は間違いないでしょう。この「火垂るの墓」、野坂先生の実体験でありまして、戦災で家族の殆どを喪うという、辛い経験をされたんですね。僕、つくづく思うのですけれど、戦を体感された世代の文士の皆さんって、「戦争の現実をどうしても後世に伝えねばならない」という強い強い意思、英語では determination ですか、其れがビンビン伝わって来まして、文章に非常に力があります。昨今の作家とは大きく異なる所以ですけれど、野坂先生は勿論の事、大岡昇平先生の「野火」、坂口安吾先生の「白痴」、井伏鱒二先生の「黒い雨」、島尾俊雄先生の「出発は遂に訪れず」、吉田満先生の「戦艦大和ノ最期」、何れも筆舌に尽くし難い、鬼気迫る迫力がありますもんね。

野坂先生は、実の妹を2人、お父様も戦争で亡くされていますから、筋金入りのアナーキーさを持つ、反戦思想の持ち主でした。でもね、僕、単なる反戦思想では、其処まで野坂先生を耽読しなかったと思います。盗っ人にも三分の理と申します様に、戦をしたくない、と訴えるだけでは、戦争を防げませんよね。様々な経験をし、深く深く考え抜いた末の反戦という考えならば、傾聴に値します。野坂先生は、その点、非常にアグレッシブで説得力がありました。元々は士族の出であり資産家の裕福な家柄、其れが戦災孤児の境遇となり、生きる為に窃盗を行い少年院に入り、そして早稲田の仏文科に入学、ありとあらゆる多くのアルバイト--ゲイバーのボーイからお寺の小僧から蕎麦屋の出前まで--を経験後TVのコント作家となり、そして作家としてデビューするんですね。直木賞を獲ってからも疾風怒濤の大活躍でありまして、参議院議員に当選、多くのCMに出演、落語も漫才も舞台で披露、映画にTVにフル出演、私塾を開き戦前戦後の歴史を教え、田圃で米を造り、そして沢山のレコードを出し日本武道館でコンサートを開き、「おもちゃのチャチャチャ」の歌詞を書いてレコード大賞まで取るんですもんね、真の才人と言えましょう。実力派バンドとして知られる、クレイジー・ケン・バンドとも共演、リーダーの横山剣さんと数曲をデュエットしているんですから、野坂先生の歌唱力もプロ裸足であります♪そうそう、お酒と蕎麦とラグビーをこよなく愛するなんて、野坂先生、気が合いますね♡

そしてね、野坂文学のもう1つの核、それは、性についてでありましょう。生きる事、其れ即ち性である、という感がありまして、もうね、本当にタブーが無いんですよ。少年時代に体感した大空襲、そして2年間の戦災孤児の体験中、極限の人間模様を幾度と無く見たでしょうから、一連の作品は、近親相姦に自慰に同性愛に乱交と、不道徳の極みであり、虚無的かつ誠にアナーキーでした。「色即回帰」「真夜中のマリア」「卍ともえ」「死屍河原水子草」「処女の時間」「好色の家」「恋車蓮華地獄」「童女入水」「死の器」「背徳ごっこ」「ひとでなし」「同心円」「垂乳根心中」「砂絵呪縛後日怪談」…。タイトルだけご覧になられても、妖気漂うというか、こりゃあどうやらただならぬ雰囲気を感じませんか?

「朝まで生テレビ」に、各党の政治家達と共に、野坂先生が出演された折の事です。此処まで読まれた皆様なら、政権与党である自民党に集中攻撃すると思いますよね。でもね、野坂先生、全て平等に噛み付くんですよ♡共産公明社民自民と分け隔て無く、当意即妙に寸鉄人を刺しまして、政治家達は真っ青となり二の句が継げない有り様、誠に痛快でした。物事の本質を追求し、どんな権威にも媚び諂わず是々非々で接し、人の浮世の酸いも甘いも噛み分け、人の生業の表も裏も見て来た、野坂先生が訴える反戦だからこそ、万人をして首肯せしめる力がある、僕、そう思えてなりません。

野坂先生は、死の間際まで物を書かれていたそうですが、最期の言葉は、「この国に、戦前がひたひたと迫っている事だけは確かだろう」との由でした。真の意味での国士であり、憂国の士だったと、涙を禁じ得ません。僕、野坂昭如は男でござる、と感心しましたのは、田中角栄がロッキード事件に巻き込まれている時の事です。参院議員の立場をかなぐり捨て、「角栄はおかしい」と、同じ選挙区から出馬したんですね。勿論、完敗に終わったのですけれど、おかしいと思う事は正々堂々と訴える、其処には勝敗は関係無い、此れが男じゃありませんか!野坂先生の公約は、「二度と飢えた子供の顔を見ない」ですもんね。「アベノミクス」「戦後レジームからの脱却」「美しい国」「新三本の矢」、なんてえ、訳の分からない頭の悪そうな公約より、野坂先生の方が数段上、僕、そう思いますよ!

さて、週末はどうやらお天気が回復する様子です。将に三寒四温、気温の変動が激しいですけれど、皆様、どうぞお身体にはお気を付けて、素敵なウィーク・エンドをお過ごし下さい。それではまた来週お会いしましょう!
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