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✉ あの娘のレター ✉

鈴虫を 聴く庭下駄を 揃えあり、9月の声を聴いてから、何だかめっきりと涼しくなりまして、毎朝の犬の散歩も、Tシャツに短パンでは寒いぐらいになりました。僕、この時分になりますと、寝具をどうしようか、迷いに迷っちゃうんですよ。羽毛布団を出すには早すぎる気がしますし、タオルケットでは肌寒く、綿毛布だと汗ばみ、挙句の果てには寝間着をしっかり着込んだりして、寝汗をかいて鼻風邪になったりしまして、ホント困ります…。さて、今日は、大分県庁で「認定企業創出モデル事業」の式典があり、当院が表彰される事になりました。当院が、子育て支援等にずっと取り組んで来た事が、認められたのだと思います。大変ありがたく、かつ光栄な事で、感謝感激雨あられ、恐縮至極なんですが、僕、こういう晴れがましい席は少々苦手でして、再三お断りしたのですが、結局出る羽目になりました。その後、出張の為に新幹線に乗りまして一路熊本へ、今日は何だかとっても忙しくなりそうです。

さて、その式典に出るものですから、久方振りにネクタイを締めて、スーツを着たのですけれど、いや、首元が締まると暑いですね~。何でも今年の紳士服はチェック柄が流行りなんですって。全く知らなかったんですが、偶然、紺のチェックのスーツで良かったです。と、ここまで書きましたら、当院O事務部長もその式典に参加するのですけれど、茶のチェックのスーツですよ、やるなあ…。しかしこれではまるで下郡のチェッカーズ、浮きませんかねえ!?

僕、以前から、コムデギャルソンって、中々雰囲気があってカッコ良いなあと思っていたんですが、ここのブランドは割と個性的なフォルムですから、スタイルが良くないと着こなしが難しいですよね。このブランドを立ち上げたのは、日本を代表するデザイナーの川久保玲さんでありまして、日・仏・米で数多くの叙勲を受けた、御年72歳の素敵な女性ですけれど、近影を拝見しましたら、おかっぱ頭に黒のレザーのライダーズ・ジャケット姿でバシッと決めてまして、カッコ良いなァ。僕の親戚の叔母さんなんて、川久保さんと同年齢ですが、風船みたいな服を着てますもんね、今度レザー・ジャケットでもプレゼントしてあげようかしらん。さて、その川久保さん率いる、コムデギャルソンの今秋の紳士服のスーツのテーマは、何と「反戦」でありまして、広告が「自由を着る」ですよ。アヴァンギャルドで挑戦的、とても敵わない72歳であります。そしてね、今年のスーツは、脇腹の部分に、 soldier of peace 、平和の戦士と書かれておりまして、今日の式典、これにすりゃあ良かったかなあ…。川久保さんのシビれる程カッコ良い語録を少しだけご紹介しますね。

これをやったら安全でしょう、リスクが無いでしょう、という事が、コムデギャルソンにとってはリスクです。

私だってそんなに強くはありません。ただ、強気のふりも時には必要です。どうしようと迷っていても、何も変わらない。

本人の中身が新しければ、着ている物も新しく見える。ファッションとは、それを着ている人の中身も含めたものなのです。

無視されるより、けなされた方がマシです。

作り手として、常に世界一を目指しています。もし結果が一番でなくとも、少なくとも一番にチャレンジする心を持たなければ。

閑話休題、今日の全国紙全てに出ていた様に記憶していますけれど、文豪太宰治が、先輩作家の佐藤春夫宛てに、「芥川賞を下さい」と連綿と綴った手紙が発見されました。太宰はどうも、芥川龍之介に対し、同性愛的?な憧れを抱いていた様で、それもあって、芥川賞がどうしても欲しかったのでしょう。でもね、佐藤春夫宛ての手紙を見ると、これ、尋常じゃ無いんですよ。毛筆で全長4㍍を超す手紙だったそうで、「佐藤さん、私を見捨てないで下さい。私を見殺しにしないで下さい。」「今度の芥川賞も私のまへを素通りするやうでございましたら、私は再び五里霧中にさまよはなければなりません。恥かしいやら、わびしいやらで、死ぬる思ひ」ですって…。先の川久保さんの凛々しいお言葉とは段違い、太宰もしょうがねえなあ。又吉君では無く、太宰にあげれば良かったのにとも思うのですけれど、同様の手紙を、ノーベル賞の川端康成にも出しているんですよね。「困難の一年でございました。私に希望を与へて下さい。老母愚妻を 一度限り喜ばせて下さい 私に名誉を与えて下さい」とまたもや芥川賞への執念を訴えるんですが、川端先生はこれを黙殺、石川達三の「蒼氓」が受賞します。そうしましたら太宰先生、エッセイで川端先生への怒りをぶちまけるんですね。「私は憤怒に燃えた。幾夜も寝苦しい思ひをした。小鳥を飼ひ、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す、そう思った。大悪党だと思った。」ですって…。完全なるストーカー気質の逆恨みでありまして、こんなのに付きまとわれたら、こりゃ堪らんな~と思いますよね。また、こういう人って、とても諦めそうに無いですもん。

ただ、作家って、自分の小説では、彫刻を彫り刻むが如く、言葉を吟味して苦吟しながら書くのに、手紙になりますと感情が剝き出しでありまして、寧ろ作品より面白かったりするんですよ。以前の拙ブログと、少々重複する処もあるかもしれませんが、其処はご海容頂きまして、先ずは昭和期最大の歌人と呼ばれた、斎藤茂吉先生から。斎藤先生は、僕らの大先達でもありまして、優秀な精神科のドクターでもあったんですが、老年に入り、若い魅力的な、弟子筋の女性に強く惹かれてしまうんですね。その人には、自分の手紙は読んだらすぐに焼却する旨を何度も繰り返し伝えていたんですが、全部取ってあり、公開されたんですね。「ふさ子さん、ふさ子さんはなぜこんなにいい女体なのですか。どうか大切にして、身体を大事にして下さい。ふさ子さん、何故そんなにいいのですか。」「ふさ子さんの小さな写真を出してはしまい、又出しては見ています。恋しくて恋しくて、飛んで行きたい様です。ああ、恋しい人、憎らしい人。」、何だか、書いてる僕も、読者の皆様も顔から火が出て、失笑する思いでしょうが、もう1つだけ。「写真を出して、目に吸ふやうに見てゐます。圧しつぶしてしまひたい程です。この写真には乳ぶさが透き通って見えます。食ひつきたい!」って、爺ちゃん爺ちゃん、兎に角落ち着いて、大丈夫!?このド助平ジジイが、沈黙の 我に見よとぞ 百房の 黒き葡萄に 雨ふりそそぐ、とか詠めるんですから、だからこそ人間って面白いですよね。

話は戻って、太宰のラブレターも、「こひしい」だけの一文が有名ですよね。何だかグッと来ますけれど、谷崎クラスになりますと将に横綱でありまして、「あなた様に一生お仕え致します。ご主人様、どうぞどうぞご機嫌をお直し遊ばして下さいまし。今度からは泣けと言ったら泣きます。」って、最早常人には付いて行けないマゾヒズムの世界へようこそ、という感じがします。尤も、70を過ぎた谷崎は、年若い姪っ子に入れ込み、多額の現金に象牙に翡翠、棟方志功の原画に香港で造られた靴に毛皮のコートと、贈り物攻勢ですもんね。そのド変態ジイサンが、「細雪」の様な、日本語の美しさの極限の様な文章を書くんですもんね。

フランス人の恋人に、フランス語で優雅な別れの手紙を記した永井荷風。「蟹工船」で有名なプロレタリア作家の小林多喜二も、ラブレターの上手さは天下一品だったそうです。素朴な恋文の武者小路実篤、思いの外情熱的な、内田百閒に山本夏彦。ぺダンチックな開高健。ロジカルで知的な安部公房。もっともっとご紹介したいんですが、字数も増えて来ましたし、又の機会にしましょうね。まァ、平安朝の昔から、和歌を贈り合う文化が我が国にはあった訳で、謂わばメールやラインの元祖とも言えるでしょう。

さて、最後にご紹介したいのは、手紙をテーマにした作品2つであります。1つは、井上ひさしの「12人の手紙」、これ、非常にペシミスティックなんですが、大傑作でありましょう。12人のありとあらゆる手紙が紹介され、夫々独立した作品なんですが、最後は見事に繋がりまして、小説の醍醐味を味わえる作品です。そして、「三島由紀夫レター教室」なんですが、これ、非常に刺激的でして、将に巻を擱く能わず、一気に読める事は間違いありません。小見出しだけを拾ってみますね。「肉体的な愛の申し込み」「年賀状の中の不吉な手紙」「恋敵を中傷する手紙」「裏切られた女の激怒の手紙」「「処女でない事を打ち明ける手紙」…、いやはや何とも、どれも面白そうです。そして、この小説の白眉とも言えますのが、「同性への愛の告白の手紙」でありまして、流石は同性愛者の三島先生の面目躍如でありましょう。何せ、わざわざスペインから男性のフラメンコ・ダンサーを招聘、満月の下で全裸で踊らせ、見ている三島先生ご自身もすっぽんぽん、というコントの様なシチュエーションを楽しめる方ですもんねえ、小説も滅茶苦茶面白いですよ♡最後に、個人的な経験を書きますと、今までで貰った手紙で最も嬉しかったのは、オーストラリアに住んでいた2年の間、時折来る、日本の友人達からのエア・メールでした。当時は携帯もPCもありませんでしたから、手紙が着くのに1週間ぐらいは掛かったのかな、RCサクセションの「あの娘のレター」の歌詞の通りでして、♬ 退屈なこの国に エア・メールが届く お前からのレター 遠くから とても遠くから ♬、そのままの世界でして、そりゃあ嬉しかったなァ。 

さてさて、そろそろ県庁の式典に行く時間となりました。熊本までの道中は長いですけれど、車窓からの景色でも愛でながら、気を付けて行って参ります!それでは皆様、今度は木曜日にお会いしましょうm(__)m。
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