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人魚の嘆き

おはようございます。昨日は、飲み会がありまして、久しぶりに鱧を頂きました。大変結構、非常に満足しましたが、夏の旬の味、と言えば、岩牡蠣、穴子、するめいか、鱸、瓜、茄子、鯵、伊佐木あたりでしょうか。僕、特にこの時期の岩牡蠣は大好物です!

鱧の梅肉和えを食しながら、谷崎もこの初夏の味が大好きだったんだよな~、と思いました。という訳で、本日は僕の敬愛する大作家谷崎潤一郎について書いてみます。

この谷崎先生、まず有名なのは、数多くの女性達との自由奔放なラブ・アフェア、でしょうか。3度の結婚、付き合った女性達は数知れず、家庭内では多くの女中さんに囲まれ、最後の愛人は40歳年下の義理の娘なんですから、まあ凄い情熱ですね~。谷崎とその義理の娘との往復書簡が奇跡的に残されていまして、これがもうグイグイ引き込まれる面白さです。さて、最初の奥さんは親友に譲渡、2番目の奥さんはスピード離婚、最後の奥さんを神聖なまでに美化し、自らが使用人としてつかえたかと思えば、廻りにいる多くの女性達の足の裏に墨を塗り、足型を取りまくる、という殆ど変態の域に達してます(苦笑)。
そして、食に対する執念とも言える執着です。明石の鯛に蛸、熱海湯河原の鯵、神戸牛、京の祇園際での鱧、上野の洋食、神田の蕎麦、上海の酔蟹、杵築の城下カレイ、四万十川の鮎、全国各地の旬のものしか口にしない、というんですから、何と我儘で理想的な生活でしょう(^^)。大体、「旬」とは本来10日間、という意味なんですよね。谷崎は昭和40年に没していますから、当時はまだまだ冷凍技術も発達していなかったでしょうし、よくもまあ全国各地から取り寄せ、食べも食べたり、という気がします。

続いて、今までに知られていなかった新たな概念、刺青、マゾヒズム、フェティシズム、レズ、老人の性、といったスキャンダラスな題材を取り上げた事でしょう。こういう現代でも際どい話を、大正時代の始めにじゃんじゃん発表しちゃうんですから、恐れ入ります。年下の小悪魔の様な少女に翻弄される中年男性を描いた「痴人の愛」、大阪の良家の奥様が悪女の虜になるという「卍」、盲目の女性につかえる男性の弟子が、師匠の気持ちを分かる為、己の目を突く「春琴抄」、駄目男が2人の女性の間を行き来する「猫と庄三と二人のをんな」、老人が若い女性のしもべになり、その美しい脚に踏まれ続ける事を願う「瘋癲老人日記」…。なんだ~、只の変質的なおじちゃんじゃない、と思う方は暫しお待ち下さい!

ただのHなおじさんが、ノーベル賞候補に挙げられ、フランスでもアメリカでも、日本人で唯一「世界文学全集」に所収され、全米芸術院並びにアメリカ文学アカデミー名誉会員に選ばれ、文化勲章を受賞出来るでしょうか?

谷崎文学の魅力は、まずその卓越した文章力にあります。正確で緻密、流麗で繊細、艶やかでリズミカルな文章は、近代日本文学中、ずば抜けた実力と言えます。Hな話をちっとも下品に感じさせないその筆力は、流石に大谷崎、と異名が付いただけの事はありますねえ。そして、作品毎に全く異なるその文体も驚きですし、歴史小説、ミステリー、ブラック・ユーモア、幻想譚、探偵小説に料理小説まで網羅した幅の広さも驚異です。僕の好きな「人魚の嘆き」なんて、幻の人魚を追いかけて没落してゆく男達の話ですもんね~。何よりも特筆したいのは、そのストーリー・テリングの上手さ、巧みさです。「卍」を例に取りますと、冒頭からいきなり長い手紙なんです。読み進めていくと、大阪の育ちの良いご婦人なんだなあ、という事が分かりますが、どうも何か引っ掛かるんですよね。女性から女性に宛てて書いている上品かつ丁寧な手紙なのに、どうも恋愛感情、恋するやるせない気持ちが、ちらりちらりと垣間見えるんですよ。他人の手紙を盗み見ている様な背徳感も生まれて来ますし、ええっ、この2人女性同士だよねえ、どうなっちゃうの~、と感じた時点でもう駄目です。まんまと谷崎の術中に陥った訳で、後はもう、巻を擱くあたわず、という言葉通り、食事も睡眠も忘れて読み耽る、という事に相成ります。

いかがでしょうか?僕のお薦めは、「卍」「痴人の愛」「蓼喰ふ虫」あたりでしょうか。先のお話の続きを知りたくなった方はどうぞ書店へ~(^^)。

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