MOET&CHANDON CHAMPAGNE

読者の皆様方、今年も1年間、本当にありがとうございましたm(__)m。望外の喜びでしたが、訪問者の数も、年々歳々増え続けて来ている様で、頂いた拍手は23万を超え、早いもので、このブログを続けて3年が経ちましたけれど、お蔭様で無事に書き続けてこれました。これも一重に読者の皆様のご贔屓の賜物です。この場を借りて、厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございます。

まず1点告知から。当院は明日から年末年始の休診でして、12月29日より、1月3日までお休みを頂いております。ご了承下さいませ。

一富士二鷹三茄子、四扇五煙草六座頭、来年の話をすると鬼が笑うと言いますけれど、おっとその前にご説明を。富士と扇は末広がり、鷹と煙は上昇しますから運が上がり、座頭は昔の言い方で、按摩や鍼灸にたずさわる人で、茄子と同様に毛がありませんから、怪我無い、との洒落ですね。要は対になっている言い回しな訳です。どうか皆様方にとって、来年が素晴らしい年になる事を祈っております。

さて、その対で思い出しましたが、或る画家のお話と参りましょうか。かってのオーストリア帝国でありましたチェコの産、アルフォンス・ミュシャについて、今日は綴ってみたいと思います。

彼の絵の魅力、それは何と言っても、柔らかい曲線、そして優美な女性の姿に尽きるのではないでしょうか。彼が活躍したのは19世紀の終わりから20世紀の初めにかけてでありまして、時は恰も、アール・ヌーボォーの時代でした。このアール・ヌーボォーとは、今までの概念に捉われずに、建築に絵画に家具に宝飾等々、全てに渡って新しい美術を追及して行こう、というムーヴメントだったんですね。フランス・イングランド・スペイン・ドイツにベルギーと、欧州全土を席巻、それは世界中に広まった訳です。そうですねえ、最も有名なアール・ヌーボォーのモニュメントが、何時完成するのか分かりませんが、バルセロナにある、ガウディのサクラダ・ファミリアです。そして、日本の浮世絵が、アール・ヌーボォーに多大な影響を与えたのは広く知られる処でしょう。僕、広重も北斎も歌麿も大好きですけれど、あの大胆なデフォルメや構図が、当時の芸術家に衝撃を与えたのは間違いありませんね。

さて、ミュシャに話を戻しますと、彼は自由奔放と言いますか、少々人とは異なった経歴の持ち主なんです。聖歌隊の出身で歌を唄っていたのですが、裁判所に勤めたり舞台の裏方をしたり、デザインを学んでから絵画の道に入った変わり種でして、35歳の時に、千載一遇のチャンスを掴みます。当時、世界最高の女優と呼ばれた、サラ・ベルナール、彼女の舞台のポスターを手掛けたんですね。威厳と優美、格式と自由、繊細と大胆、相反する要素が上手に同居しておりまして、今まで誰も見た事が無かったこの絵で、ミュシャは一夜にして、一躍時代を象徴する存在となりました。恐らく、様々な職や勉強をしたのが役立ったのだと思うのですが、彼のアートの特徴として、コンセプトを持ち込んだ事が挙げられるでしょう。今ではちっとも珍しくありませんけれど、4枚の絵で1つのテーマだったりするんですね。それは星座であったり、四季であったり、宝石だったりするんですね。例えば、「宵の明星」「月」「北極星」「明けの明星」の4枚の絵で、1つのコンセプト・アートとなるんです。「トパーズ」「ルビー」「アメジスト」「エメラルド」、「朝の目覚め」「昼の輝き」「夕べの夢想」「夜の安らぎ」、どの絵をとっても、美しい女性が、繊細な線と淡い色遣いで描かれており、心を奪われる事は必定です。

合縁奇縁と申しますか、縁は異なもの味なもの、これが悪い方に向かいますと、怪談噺の「真景累ヶ淵」の様になりますけれど、孤高の芸術家、ミュシャのたった1つの趣味、それはカメラでした。親しかったゴーギャンを撮影した写真が沢山残っているぐらいですから、その熱中ぶりが伺えます。偶然の一致で面白いなあ、と思うのですが、日本一のミュシャのコレクターの方がかっていらっしゃいまして、その人、実は、全国チェーンでその名を馳せた、「カメラのドイ」のオーナー、故土居君雄さんなんですね。

この土居さん、立志伝中の人物でありまして、元々は福岡で小さな小売店の経営を細々としていたのですが、昭和30年の時点で、ダイレクト・メールやアンケートにカメラが当たるくじを付けて、顧客名簿を作成したんですね。昭和30年と言えば、戦後の復興が漸く緒に就いた頃でして、国民皆が食べるのが精一杯の時に、大変なアイディアマンと感心しますけれど、この名簿を元に安売りチラシを配りまして、大成功を収めたのです。最盛期には業界3位、全国140店舗、売上高は350億円に達したのですから、まあ大したものです。

この土居さん、まあ大変なけちん坊だったそうで、僕の父とは違い女遊びなぞもっての外、お酒も飲まず煙草も吸わず、勿論ギャンブルはご法度、無駄遣いは一切しなかったそうなんですね。ただ1つの道楽、それはドイツのカメラ・メーカーを視察に行った際に見た、ミュシャの絵でした。まあ、本業で大成功を収める様な人ですから、熱中した際の集中力が違います。未だミュシャの評価が低い時代から、土居さんは、彼の絵を集める世界有数のコレクターとなるんですね。集めた数、何と500点以上と言われておりまして、土居さんは、ミュシャの息子さんとも親友になる程でした。驚く事に、一時埋もれていたミュシャの魅力を東洋に広めた、という事で、チェコの国から土居さんは「文化交流最高勲章」を授与されます。残念な事に、土居さんはこの勲章を貰った翌年に急逝されまして、「カメラのドイ」も倒産の憂き目に合うんですね。

故人が折角集めた、ミュシャの貴重なコレクションが散逸してしまうのを恐れた遺族は、土居さんが居を構えていた、大阪は堺市に全て寄贈します。堺市立文化館アルフォンス・ミュシャ館に、そのコレクションの全てが収められていますから、僕、近いうちに是非行く積もりなんです。カメラが結んだ不思議な縁と言いますか、まあ、優雅で淡麗、ミュシャの絵にはそれだけの魅力がありますもんねえ。

先程、仕事納めにおいて、僕からスタッフへの挨拶も無事終わりまして、いよいよ今年も終わりが近付いて来ました。今夜と明日は飲み会ですし、僕の好きなミュシャの絵の1つ、シャンパンのモエ・エ・シャンドンのリトグラフを思い浮かべながら、琥珀色の飲み物で酔おうかな!?それでは皆様、1年間のご愛読、誠にありがとうございましたm(__)m。来年の更新は1月3日を予定しております。それではよいお年をお過ごし下さいませ。I wish you a happy new year! cheers!
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