EARLY AUTUMN

生活のリズムが乱れているのか、寒さの所為か、疲れのピークなのか、何だか昨夜は中々眠れませんで輾転反側、羊を数えてみようか、ナイト・キャップをゆっくりやるか、温めのお風呂に浸かるか、久し振りに葉巻でも楽しむか、色々と考えたんですが、結局は布団にくるまって読書と相成りました。そうしましたら、それが結構面白く、結局読了してしまったんですが、寝付いたのは4時前でして、5時には愛犬の散歩ですから、もう僕、朝から瞼が腫れぼったく、兎の眼であります。とは言え、最近の僕は小説を読む事は滅多にありません。ノンフィクション物ばかりでして、かって新潮文庫の「あ」から始めて「わ」まで、主要な文学小説には目を通した積もりなんですが、何だかフィクションには余り魅力を感じなくなったんですよ。実際の人間の行動や言動の方が余程面白いですもんね。血液型に拘ったりするのは日本人だけらしいんですが、B型の方なんて非常に興味がありますよ。実際にお付き合いするとなると些か躊躇しますけれど、独特の性格をしてますもんね。所構わず天衣無縫と言うか、江戸っ子は五月の鯉の吹き流し、悪気が無くあっさりしているのは長所としても、何も考えず思うがままに発言、その場の空気なんてお構いなし、天上天下唯我独尊、これは御釈迦様の言葉ですけれど、この世で一番私が偉いのよ、といった風情、フーンと鼻を鳴らす音が聞こえて来そうです。因みに僕は日本人で最も多いとされるA型、繊細で謙虚で慎み深く、常に周囲に気を使うナイス・ガイであります、なんちゃって。

どの作家かは忘れましたが、「君、魚が釣れても面白いんだよ。人が釣れればもっと面白いだろう。精々楽しみたまえ。」、何だか艶っぽいですが、これぐらいの箴言がアドリブで出るぐらいの人の物じゃないと、読みたくありませんね。要するに大人の鑑賞眼に耐え、識者が唸るぐらいのものじゃないければ、昨今は本も高いですし、とても長い時間を費やせませんよ。

さて、昨夜一気に読み終えたのは、「スノーマン」ジョー・ネスボ著、集英社文庫、です。何だか秋の夜長にミステリーって似合う気がするのは僕だけなのかな。でも中々の佳作でした。僕、割と推理小説やミステリーの類は好きでして、この手のジャンルはかなり読んでいると思います。話を戻して、この「スノーマン」ですが、僕が無知なだけかもしれませんが、最近のミステリーは北欧の作家達が頑張っているとか。本作も舞台はノルウェーの首都オスロなんですね。サイコパスと言いますか、シリアル・キラー、連続殺人のお話でして、犯人はそのトレースというか痕跡として、必ずスノーマン、雪だるまを被害者に向けて置いておく、という粗筋でした。凍てつく様な厳寒のノルウェーの地に雪が積もる頃になると、雪だるまと被害者が増え続け、事件は二転三転、混迷を深めるばかり…、こんな話ね、夜中に読み始めたら、怖くてもう眠れやしませんよ。どうやら主人公の刑事が大人気らしく、全世界の売り上げが、総計2000万部というんですから、こりゃ大したものです。

この手の小説は、所詮嘘なんですから、細かい処のディティールが書けていなければ、読めるものではありません。冬の北欧の街の様子、主人公の心理描写、伏線の張り方、何れも結構でして、映画化もあり得るんじゃないかな。未だ少々眠いですが、他の作品も読みたくなりました。

先に挙げた大人の鑑賞に耐えうる一冊だったのですが、ここからは僕の仮説なんですが、エンタテイメントを書ける人って、どうも通常のコースを辿った人生では無い方が、圧倒的に多い気がするんですよ。下手をすると、小説よりもその作家の人生の方が余程興味深かったりして、ここら辺が日本人作家で娯楽小説の達人が少ない由縁かもしれません。では、かって僕が愛読したミステリー作家達の経歴を一挙大公開と参りましょう!完全に僕の趣味でスイマセン…。

では、まずは海外から。まずは「シャーロック・ホームズ」で世界的に有名なコナン・ドイルです。この人の人生も波乱万丈なのだよ、ワトソン君。ドクターである事は夙に有名ですけれど、元々はセミプロのサッカー選手でして、ゴールキーパーだった由なんです。船医として北極圏やアフリカ行きの漁船に乗り込み、戦争にも従軍し、クリニックを経営する傍ら、小説を書いていたんですね。ハード・ボイルド小説の第一人者、「大いなる眠り」のレイモンド・チャンドラーは、若き頃にパリやミュンヘンに語学留学をし、帰国後公務員となり、新聞記者、果樹園の作業員、パイロット、石油会社の経理担当重役の職歴を経て、作家となります。どんどん参りましょう。「007」シリーズのイアン・フレミングは、元々は銀行マン、そして問屋に転職、新聞記者を経て、本当にスパイとして働いていたんですね。陰影がある私立探偵が活躍する「スペンサー」シリーズが大ヒットしたのは、ロバート・B・パーカー、彼は長年保険会社の外交をし、そして大学に再入学、文学博士となり、実際に教壇に立ち生徒を教えていたプロフェッサーです。戦闘機のパイロットから、エリザベス女王の専属騎手となり、レースでは通算350勝以上を挙げ、新聞記者として勤務した後、イングランドを代表する大ベストセラー作家になったのは、ディック・フランシス。おっと忘れてました。「スノーマン」の作者、ジョー・ネスボも、元プロサッカー選手であり、株式仲買人であり、ジャーナリストであり、ロック・ミュージシャンの顔も持つという、多彩な才能を誇ります。

日本だって、近年の作家は小粒な気がしますけれど、かってのスター作家は決して欧米に負けておりません。日本の推理小説の祖、「明智小五郎」「怪人二十面相」で有名な江戸川乱歩は、造船所勤務から古本屋経営、雑誌の編集者を経て、ラーメン屋さんをやってたんですから、中々個性的な経歴と言えましょう。謂わずと知れた日本ミステリー界の巨人、ワン・アンド・オンリーの松本清張は、露天商から飲食店勤務、会社の給仕、陸軍に兵隊に取られ、除隊後は印刷所の工員、ですもんね。まあ、あの唇では、客商売には余り向いてなかった気がしますが…。何度も映画化された「犬神家の一族」の横溝正史は元々は薬剤師さん、それでトリックに毒薬が多いのかな、それはさておき、疎開先での長期入院後、今のみずほ銀行に勤め、雑誌編集長を経て作家になる訳です。「邪馬台国の秘密」「白昼の死角」の高木彬光は、薬学と冶金学を学び、中島飛行機に入社、戦時中の戦闘機を設計していました。鉱山の発掘や弁護士を弁護する程の法律の知識を誇り、易者としての顔も持っていたんですね、いや、大したものです。

僕ね、彼らには共通項があると思うんです。それは、老若男女国籍を問わず、様々な人々を観察出来る仕事に就いた事があります。そして皆さん、自分の手で人生を切り開いた事。沢山の職種を経験した事で、物事の見方が単一では無く、重層的になった事もありますよね。あ、人を喜ばせるサービス精神も旺盛です。苦境や裏切りや貧困にもめげず、シニカルさがありながらも、心の奥底で人の愛情や結びつきや可能性を信じていた事。文は人なりと申しますし、こういう人達が書いたものが、詰まらない筈がありませんよね。

でも、これ、実は、どの職種においても成功する秘訣でして、人が好きな人って、少々失敗や紆余曲折があっても、結局は上手く行く気がするんです。だって、小説とはコミュニケーションでして、作者が不特定多数の読者に宛てた手紙の様なものですから、読んでくれるという前提の元に書かれるんですから、それは即ち、人を信じていますもんね。僕も、うちの職員の可能性を心から信じています。鈍感だなあ、とか大丈夫か、と感じたとしても、いつかは僕の真意を分かってくれる筈、そう思っているんです。出来る事ならば、常に皆の笑顔が見たいですし、あまりにオプチミスト、楽天的に過ぎるかもしれませんが、人を騙すよりも騙された方がマシですよ。

オッ、珍しく柄にも無い良い事を書いた気がしますね!?そうそう、何処に行ってたのか皆目分かりませんが、当院の事務部長が長い長~い休暇から戻って参りまして、案件が色々と溜まってますから、これから打ち合わせです。人の可能性を信じて、愛を信じて、今日も頑張ります!
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