SILENT SPRING

皆様、週末は如何お過ごしでしたか?ここ大分は、両日とも生憎の雨でして、晴耕雨読の顰に倣い、終日書に親しんでおりました。あ、そうそう、土曜日は外出したんですが、前々から当院に将棋盤と駒を揃える必要があり、僕、市内唯一の碁盤店に伺ったんです。そのお店、一見何処からどう見ても、普通の一般家屋だったのですが、ご主人が縁側の隅で座られて、何やら彫っておられました。野に遺賢ありと申しますけれど、ご主人は穏やかで温厚、かつ快活なお人柄なんですが、お話を伺ってみますと、何と45年間もの間、職人としてずっとやって来られたとか。

道理で、右手の親指なんて、まるでプロ野球のベテラン投手の様に変形しておりまして、その歳月の重みを感じた次第です。いや、門構えとは裏腹に、日向産の榧--将棋盤としては最高級の材質です--の六寸はあるのかな、高級な盤が所狭しと置かれておりました。ご主人の先代が、愛用されていたという駒も拝見させて貰ったのですが、まあ見事なまでの飴色、黄楊の盛り上げの字体、虎斑模様が美しく、暫し見惚れてしまいました。将棋の駒は使えば使う程、飴色へと変わって行くんですね。時には日本酒で磨いたりすると、汚れが落ちて艶が出るんです。榧の樹が最も駒には適しており、盛り上げとは、「歩兵」「金将」「飛車」と彫った処に、漆を何度も何度もなぞり、幾層にも塗り込むんです。そうしますと、うっすらと字が盛り上げるんですね。虎斑とは、読んで字の如し、木の材質のほんの一部分で、虎の毛皮の様な縞模様があるんですが、そこだけを使用したものなんです。時価で恐らく50万は下らない一品でして、いや、眼福でした~♡♡。

ご主人の造られた盤と駒を、羽生名人がタイトル戦で使っていたり、深浦さんというトップ棋士が大分まで来られ、一緒に記念写真を撮られていましたけれど、近年は盤も駒もちっとも売れないとか。かって500万はした最高級品が、300万でも厳しい由、物の価値が分からない人も増えたのも一因でしょうが、長く長く続く、景気の低迷に尽きるんじゃないかなあ。僕、日本古来の伝統を守る職人さん達を守っていかねば嘘、そう思いますし、安部の野郎は大企業だけ守ってどうすんの!どうも、証券会社に広告代理店、マスコミや総合商社等が自民党は大好きの様ですが、こんな輩は、自らの手で、何1つ生み出す事が出来ません。人の懐をあてにして、高い手数料を取るだけの、本来は無用の連中なんです。まあ、自民党に莫大な献金をしてるんでしょうが、人間、額に汗して働くべき、僕、そう思いますし、農家や漁師の方々は勿論の事、暑い中も寒い中も満員電車にも文句を言わず毎日通勤するサラリーマン、料理人に工員に医療スタッフ、林業に職人に自営業、まだまだ沢山の職種の方がいらっしゃるでしょうが、真面目に誠実に働く人が、正当に報われる社会でなくては嘘でしょう。それなのに、これまた何も生み出さず、税金を浪費するだけの、公務員ばかりを大事にする我が国の施政は、間違いだらけであります。

閑話休題、休日の間に読んだ本を列挙しますと、ブルース・スプリングスティーンのインタビュー集、地域の珍しい缶詰を集めて紹介したもの、電車旅の紀行文。内田百聞と色川武大先生の随筆、永井豪と小池一夫先生の漫画、海音寺潮五郎先生の歴史小説。ボクシング&野球&ラグビー&映画の雑誌。戦前の右翼のテロリズムのノンフィクション。日本共産党の通史。古代ローマの一般人の生活を描いたノンフィクション。小林一茶の句集。永井荷風先生の文芸評論。本棚を見ればその人が分かると申しますけれど、脈絡が全く無く、お恥ずかしい限りです…。さて、僕の最も印象に残りましたのは、「草魚バスターズ もじゃもじゃ先生、京都大覚寺大沢池を再生する」という本なんです。

さてこの大覚寺、優れた漢詩人としても有名な嵯峨天皇が開かれたものでして、平安時代初期に造られた国宝のお寺でして、そうですねえ、彼の有名な京都太秦撮影所の近くであり、お寺の境内はテレビや映画の時代劇で、撮影に良く使われていると言えばお分かりになるかと思います。大覚寺に隣接するのは、本書の舞台となる大沢池でして、実はこの池、人口池なんですね。1200年前の技術の粋を極めた人口池であり、日本最古の庭池であり、神事にも使われ、地域周辺の灌漑用水としても未だに使用されている、という重要極まりないものなんです。

将に日本史と共にある池と言っても過言は無い訳ですが、かっては大量に繁茂する水草を周辺の住民が刈り取り、それを堆肥として利用、景観が保たれていたそうなんですね。水草の適度な間引きにより、清潔な水が保たれ、農家も潤い、周辺の木々も豊かに咲き、水鳥や魚達も適正な数だった訳です。ところが農薬や肥料が進歩する事により、水草を誰も取らなくなり、大量に生い茂り水質が悪化、水底はヘドロ化し悪臭芬々、周囲の美しい桜や梅までもが枯れかかり、水鳥も魚も激減、池は腐敗しつつありました。寺院の僧侶達は困り果て、草魚という水草を食べる中国の魚を池に放ちます。ところがこの草魚、30㌔以上に成長する大魚だそうで、水草を食べてくれるのは良いのですが、大量に増えてしまい、ありとあらゆる物を食する様になり、どうしようもなくなってしまうんですね。池の水を抜き、捕まえようとしても、ヘドロ化した泥濘の奥底に隠れてしまい、どうしても捕えられず、万策尽き果てるんです。

そこに、農学博士であり、京都嵯峨芸術大学の真坂教授、強度の天然パーマで、渾名が「もじゃもじゃ」先生に、大沢池再建の白羽の矢が立つんですね。1200年前の景観を再現する為に、画期的なアプローチをしたり、草魚を捕獲する為に各方面の力を借りたり、そして周辺の枯れかかっている草木や花々をも蘇らす事になるんです。これ、勿論身体を使いますし、そして人間の知性と経験と想像力の大冒険でありまして、将に巻を擱く能わず、一気に読了致しました。あまり書きますと、未読の方の楽しみを奪いますけれど、僕、心の底から感動したのは、10年の月日と、のべ3000人の協力を得て、池はどうやら再生するのです。池の水は澄み小魚の群れが泳ぎ、蓮の花が咲き、水鳥が舞い、池の畔の木々の緑も美しく、将に極楽浄土の風景なのですが、菱という水草が水面を埋め尽くしたそうなんですね。この菱の実、あの泥濘と化し、腐りかけた水底で、じっと耐えていたそうで、何と1200年前の平安期のものだったとか。僕ねえ、涙が止まりませんでしたよ。

僕、強く感じましたのは、この大沢池、左程大きなものでは無いんです。古代の人口湖だけあって、寧ろ小ぶりで可愛らしいサイズと言ってもいいかと思うのですが、それでも生態系を戻すには10年の歳月が掛かった訳でして、これ、福島に置き換えて考えてみますね。災害規模は大き過ぎますが、その分、優れた人材や国のお金を注ぎ込めるでしょう。ただ、小さな池の再生にも10年掛かる訳で、未だに小さな問題はしばしば起こるそうなんですね。福島の再建は長期戦になると考えた方が良いでしょうし、東電も安部も面子は棄てて、専門家に任せた方が良いですよ…。原発や都市機能のプロ、精神科を含めた医療グループ、金融機関、行政、勿論もじゃもじゃ先生にも是非ご参加頂き、国籍を問わず、考えられるであろう全てのジャンルの専門家に、潤沢な予算を与えるしか解決の手段は無いでしょう。かって、レイチェル・カーソンという環境運動の先駆けになった女性学者がいらっしゃいましたが、その著書である「沈黙の春」が爆発的に売れたのは1962年、世界中の心ある人々が瞠目したのですが、当然福島の問題はその当時より厳しくなっています。どうか、世界中の優れた専門家の皆さん、福島や東北に良い智恵を貸して下さいm(__)m。
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