雲の峰 いくつ崩れて 月の山

昨夜は寒くなかったですか?ここ、九州大分の地でも、えらく冷え込みまして、僕、深夜目覚めて眠れなくて参りました。朝方漸く寝付いたんですが、いざ起床しましたら、外はもう演歌の「氷雨」の雰囲気、何とか犬の散歩を済ませまして、納豆と干物で朝食を摂りました。ねぎ白く 洗ひたてたる 寒さかな、気分は俳聖芭蕉でして、室内も冷え切っていて、身体が暖まるまで往生しましたねえ。という訳で、本日は松尾芭蕉のお話と参りましょう。

松尾芭蕉と言えば、有名な句が多く、ウクライナでは教科書に正式採用されているぐらいですし、世界的な俳人であり、皆さん勿論ご存じと思います。その偉大な業績をご紹介するのは真面目な先生方にお任せしまして、本ブログなりのアプローチ、芭蕉の裏の顔を一挙大紹介します。実はこの人、相当ヤバいんですよ…。現代に生きていたら、コンビニで売っている怪しい実話系週刊誌、ナックルズとかGON!とかBUBKA、或いはかっての噂の真相等々に派手に取り上げられていた事は間違いありませんね。では早速疑惑を追及して参りましょう!

まずは最もポピュラーと思われる、隠密(スパイ)説から。この説が出たのは、まず芭蕉の生誕地が、現在の三重県、古語では伊賀の国である事でしょう。伊賀、と言えば滋賀県の甲賀、和歌山県の雑賀、柳生一族を生んだ熊野と並んで日本の忍者のメッカでありまして、そこが怪しまれた由縁でしょうね。史上最も著名な忍者、服部半蔵(藤子不二雄のアニメ、忍者ハットリ君の名前はここから来ています)の一族の末裔に、芭蕉18歳の時に仕えた事実もあるんですね。そして、有名な「おくの細道」が書かれたのは芭蕉45歳の時でして、この全行程は何と2400㌔、時には1日に山道を数十里進んだとの記述もあるんです。45歳と言えば僕と同じ歳、当時の基準なら下手をするともう隠居ですよ。俳句を読んでばかりのどちらかと言えば座業の人が、1里は約4㌔ですから、1日に山道を100㌔以上走破出来るのか?という事です。仙台の地、謀反を常に疑われていた伊達家の領地に滞在した折は、港や要塞を執拗に見物していた事が、同行した弟子の日記に残されていますし、行程も異様なんですよね。先の山道を1日100㌔進んだかと思えば、或る土地では2週間連泊し続けるんですよね~。かなり怪しい雰囲気が漂っていると感じるのは僕だけでしょうか?そういう背景がありますと、五月雨を あつめて早し 最上川、も何か隠された意味があるのかな、と思ったりして…。

続いては、今ならば企業家の貌があったのではないか、という一面です。芭蕉は先に挙げた様に伊賀の人、昔の感覚ならば当然僻地ですし、彼が江戸に出て来た頃は、勿論ポピュラーではありましたが、そこまで俳句は流行していなかった様なんですね。それを俳諧という形式--多くの人数が集まり、連句と呼ばれる俳句を繋げて詠んでゆくスタイル--を広め、一躍大人気を博す訳です。新たな文藝を立ち上げ、プロデュースし、勿論何らかの広告宣伝活動もしたでしょうし、そして自らスターとなる、何だかベンチャー企業を立ち上げた創立者の感がします。

そして、土木事業家としての貌です。30代の頃、江戸は神田川の上水工事の監察官を務めた記録が残っています。江戸は徳川幕府の本拠地、お膝元の公共事業を一素人に任せる筈も無く、益々芭蕉の正体が分からなくなりますよね。秋に沿うて 行かばや末は 小松川、妙に河川に絡んだ句が多いのも芭蕉の特徴の1つです。

最後に、とっておきと言いますか、芭蕉最大のタブーと呼ばれるのが、その反体制ぶりと同性愛志向でしょう。まずその反体制ぶりですが、一目瞭然でして、弟子がヤバい奴ばかりなんです。己の藩の家老を討ち、やがて切腹する侍。知人の罪に連座して入獄した男。米相場で詐欺を行った者。大体、一番の高弟が忠臣蔵で有名な赤穂浪士と交流があったというんですから、芭蕉門下は前科者だらけなんです。今まで読まれた方にはお分かりでしょうが、大体師匠である芭蕉からして怪しすぎますもんね。同性愛志向については、句集「野ざらし紀行」「笈の小文」でしょう。ここで登場するのが、名古屋の米問屋の若旦那、今で言うかなりのイケ面だったそうですが、芭蕉が一目惚れしまして、旅に同行する事を誘います。杜国というこの青年、怪しい商売に手を出し、僻地に追放謹慎処分を受けていたのに、芭蕉が旅に連れ回すんですから、師匠、それって完全に違法ですよ!?そう、まるで奥村チヨの「恋狂い」「恋の奴隷」「恋泥棒」の世界に勝るとも劣らない感がします。この道行きで詠んだ句は、寒けれど 二人寝る夜ぞ 頼もしき、ですもんね。イヤ~ン、何だか恥ずかしいですし、こっちが赤面しそうな恋の句と思うのですが、皆さん如何思われますか!?

多くの秀句を残した俳聖芭蕉の世界は、見る者によって色形が変わる、まるで万華鏡の様でもあり、光の角度によって輝きが異なる水晶のプリズムの様です。おや、大分の雨もまた激しくなって来た様ですね。初しぐれ 猿も小蓑を ほしげ也、皆様、体調管理にはどうぞお気を付け下さい。それでは本日は、ごきげんようさようなら。
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